国際郵便物も対象となるとの解釈も−模倣品流通と取り締まりの現状(3)−

(ロシア)

モスクワ事務所・サンクトペテルブルク事務所

2014年02月07日

インターネットユーザーの増加やオンラインショッピングの発展を背景に、国際郵便で模倣品が送付されるケースも増加傾向にある。このような場合、税関での取り締まりは可能なのか。2013年11月12日にジェトロと北西税関局が開催したセミナーにおけるプルコボ税関職員の講演内容などを基に報告する。最終回は、国際郵便により送付される模倣品の取り締まりについて。

<税関と日系企業が意見交換>
2013年11月12日、ジェトロは経済産業省委託事業の一環として、北西税関局と共催で「政府の模倣品対策の取り組みと日本企業製品の真贋(しんがん)判定方法」セミナーをサンクトペテルブルクで開催した。セミナーには北西税関局の税関職員17人のほか、日系企業5社(計14人)が参加した。セミナーでは、前半部分で日ロの代表者が政府の模倣品対策に対する取り組みを紹介したほか、後半部分では日系企業代表者が税関職員向けに自社製品の真贋判定方法について説明した。

<国際郵便物の取り締まりには法的根拠が曖昧な部分も>
同セミナーで講演した北西税関局プルコボ税関のエフゲニア・エマルコワ貿易規制・輸出管理課課長代理は、最近の模倣品流入手段の特徴として、国際郵便が増加傾向にあることに言及した。その背景として、ロシア国内でのインターネットユーザー数(2013年12月時点で4,520万人)の増加やインターネット通販市場の拡大、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達、国際郵便で免税で輸入できる制度(1ヵ月に重量31キログラム、金額1,000ユーロを超えない個人宛ての場合)などを挙げ、国際郵便で送付される模倣品の増加は、国際的な問題になりつつあることを述べた。

2008年8月の万国郵便連合の第24回大会議では、全てのカテゴリーの郵便送付物として模倣品と海賊版を送付することを禁止する旨を規定した万国郵便条約が採択されている。ロシアも万国郵便連合加盟国であり、同条約の内容を順守する義務があるといえる。

ただ現状、国際郵便により送付される模倣品・海賊版の取り締まりには、法律上困難で、かつ曖昧な面がある。まず、ロシアでは模倣品や海賊版などの知的財産権侵害品が輸出入禁制品として法律上明記されていない。また、ロシアにおける税関での水際措置(知的財産権保護に係る措置)は、関税同盟関税基本法第46章第328条〜第333条および「ロシア連邦における通関規則について」(2010年11月27日付連邦法第311−FZ号)第42章第305条〜第310条によって規定されている。エマルコワ課長代理は「関税同盟関税基本法第328条には、『国際郵便で個人宛てに送付される場合を含む、個人による私的利用目的での製品の輸入に対しては、知的財産権保護措置を適用しない』との規定があり、国際郵便の受取人の大半が個人であることを考慮すると、前述の条項を根拠に取り締まることは難しい」とコメントしている。

連邦税関局貿易規制・通貨輸出管理局のオレグ・アシュルコフ知的財産製品管理課課長代理は、2013年11月14日の日系企業との会合の中で、「これまでも政府に対して国際郵便により送付される模倣品・海賊版の取り締まりを明確な法的根拠に基づき実施できるよう法改正を提案してきたものの、現時点では実現に至っていない」とする一方で、関税同盟関税基本法第313条では、国際郵便での送付が認められない製品の1つとして、万国郵便連合の規則で送付が禁止されている製品が規定されており、「間接的に国際郵便による模倣品・海賊版の送付を禁止しているともいえる」との見解を示した。

<現場では送付書類を入念に検査>
では、実務上の対応はどうなっているのか。エマルコワ課長代理は「プルコボ税関(サンクトペテルブルクの空港を管轄)傘下の郵便税関ポスト(2011年11月創設)では取り締まりを行っており、模倣品の摘発点数については2012年が794点、2013年1〜9月が655点だった。国際郵便の送付関係書類の中で、特に発送国や記載内容(製品項目や製品の利用目的など)などを注意深く検査している」と、実際に取り締まりを行っていることを説明した。

北西税関局によると、2012年にプルコボ税関全体では、国際郵便により輸入されようとした服、靴、各種アクセサリー、ステッカーなどの知的財産権侵害疑義物品1,500点以上を摘発、行政違反基本法第14.10条(商標の違法使用)に基づき行政案件として処理している。同局は今回の対応を、2010年6月18日付ロシア・ベラルーシ・カザフスタン政府間協定「個人による私的利用目的での製品移動手続きとそのリリースに関する税関手続き」に基づく措置としており、適用根拠は前述のアシュルコフ課長代理の見解と異なるものの、同条約にも関税同盟関税基本法第313条と同趣旨の内容が記載されている。

(宮川嵩浩、高橋淳)

(ロシア)

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