カザフスタン経由の流入と国内製造が問題に−模倣品流通と取り締まりの現状(1)−

(ロシア)

モスクワ事務所・サンクトペテルブルク事務所

2014年02月05日

ロシアにおける模倣品の流通量がここ数年一定水準で推移している中、最近はカザフスタン経由の模倣品流入と国内製造が問題となっている。模倣品流通とその取り締まりの現状について3回に分けて報告する。

<流通量は市場の20%、中国など国外から流入>
ロシアの模倣品流通状況は統計上、1990年代と比べ減少傾向にあるものの、2008年のリーマン・ショック以降、その流通量は一定水準で推移している。法律事務所DLAパイパーが2013年11月12日に日系企業との意見交換会で述べたところによると、ロシア市場における模倣品の流通割合は約20%で、分野別にみると、繊維・軽工業製品が30%以下、香水・化粧品、アパレル・靴、食品、茶・コーヒー、菓子類が15〜20%を占めるという。また、ロシアに流入する模倣品の供給国あるいは製造国として、中国のほか、インド、シンガポール、ブルガリア、ウクライナ、ポーランドを挙げている。

工業商務省もDLAパイパーとほぼ同様の見解を示している。同省によると、2012年のロシア市場における模倣品の流通割合は20%で、分野別では、CD・DVD類が70〜80%、アルコール製品は40%、服・下着類は約30%、茶とコーヒーは30%以下、医薬品や化粧品は10〜15%としている(通関情報ポータルサイト「TKS.ru」2013年5月29日)。

国外からの模倣品流入の取り締まりを担当する連邦税関局の発表(2013年2月18日)によると、2012年の模倣品摘発点数は1,930万点で、摘発された主な模倣品は、服・靴、菓子類、おもちゃ、化粧品、自動車部品、パッケージだった。同局は、模倣品の供給国あるいは製造国について、中国や東南アジアのほか、ポーランドやウクライナを挙げている。

<日本食品を偽装した会社が摘発>
DLAパイパーは、模倣品流通ルートに関する最近の特徴として、2010年7月のロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3ヵ国関税同盟成立後、中国からの模倣品がカザフスタン南部を経由してロシアに流入してくること(関税同盟域内流入後は、国境での通関検査はなく、他の加盟国に流通させることが可能)に対する懸念に言及した。ブランド保護団体「ルスブレンド」のアレクセイ・ポポビチェフ事務局長も、ジェトロとの会合(2013年9月24日)で同様の懸念について言及し、「会員企業の多くがカザフスタン経由でのロシアへの模倣品流入を懸念している。現在、カザフスタンや中国のブランド保護団体と協力をしつつ、その対策について協議しているところ」とコメントした。

DLAパイパーは、ロシア国内(主に南部)で製造される模倣品の割合が増えてきていることについても触れた。その主な理由の1つとして、税関での模倣品取り締まりが強化された一方で、内務省(警察機関)による国内での取り締まりがそれほど効果を挙げていない現状において、模倣品業者からすると、模倣品を輸入するよりも国内で製造する方がリスクを軽減できることを挙げている。

具体的な事案として、2013年11月には日本食レストランや卸・小売り向けに日本食材を納入していたロストフ・ナ・ドヌ市(南連邦管区ロストフ州)の食品会社が、食品偽装を行っていたとして内務省に摘発されている。内務省のプレスリリース(2013年11月14日)によると、同社は、トビコ(トビウオの卵)やしょうゆ、天ぷら粉などを偽装していた。例えば、ニシンやカラフトシシャモの卵を着色してトビコと称していた。同社倉庫で、有名なベラルーシ企業のブランド名が付されたパッケージに詰められたトビコ4トン以上が押収されたほか、モスクワ、サンクトペテルブルク、クラスノダル、サマラでも、同社の食材を購入した企業で計12トンを超える偽装食品が押収された。

(宮川嵩浩、高橋淳)

(ロシア)

権利者と税関・内務省の協力には課題も−模倣品流通と取り締まりの現状(2)−
国際郵便物も対象となるとの解釈も−模倣品流通と取り締まりの現状(3)−

ビジネス短信 52f0568632898