商用外国人の宿泊に付加価値税、観光目的なら無税

(コロンビア)

ボゴタ事務所

2014年01月30日

政府は2013年11月20日に政令2646号/2013年を公布し、商用目的で入国する外国人の宿泊料金に10〜16%の付加価値税(IVA)を課税することとした。観光目的で入国する外国人に対しては、これまでどおりIVAは無税のままだ。

<外国人の入国目的を明確化>
政府は2013年4月24日付官報で政令834号/2013年「コロンビア入国に関する新規定」を公布し、それまで不明瞭だった外国人の入国目的の明確化を図った。同政令によると、入国目的が娯楽および休息(TP11)に該当する観光目的の外国人入国者は、旅券に「PIP5」の入国許可証(スタンプ)が押されることになった。

さらに2013年11月20日に公布された政令2646号に基づき、観光目的の外国人は同スタンプを宿泊先に提示することで、宿泊に伴うIVAが無税扱いとされた。一方、商用目的(NE1〜NE4)により入国する外国人はこれに該当せず、IVA込みの宿泊料金を支払うこととなった。

従来、外国居住者の宿泊に関しては、税法第481条(d)に基づき非課税となっており、外国人はパスポートを提示することで宿泊税を免除されていた。しかし、その適用はあいまいで、場所によっては外国人旅行者が課税されることもあった。今回の政令公布により、免税恩典は観光目的に限定されたが、パスポートのPIP5のスタンプを見せれば免税になることが明記されたので法的な安定性が増した。しかし、観光目的以外の場合は課税されるため、商用目的で入国する外国人の負担は増える。

<観光客の伸び悩みを指摘する声も>
外国人旅行者は、コロンビアの治安に対してマイナスイメージを抱きがち、といわれ、貿易投資観光振興機関PROEXPORTによると、観光客は年間約169万人(2012年実績)程度にとどまっている。2012年のブラジルの567万人(ブラジル観光省)、ペルーの284万人(ペルー観光省)と比較して伸び悩みを指摘する声や、約580万人の雇用者数〔2013年9〜11月、国家統計局(DANE)〕を抱える宿泊サービス業(飲食業含む)従事者からの観光振興策の強化を求める声は根強い。

商業・ホテル・飲食産業の2013年1〜9月の実質GDP成長率(前年同期比)は3.8%(統計庁、DANE)となり、前年の4.3%から減速している。数年にわたり宿泊サービス業に対する補助金などの制度構築を求めて政府と交渉してきたコロンビア旅行業協会は「政令2646号により外国人観光客の受け入れを強化することが、わが国の観光業発展につながる」と歓迎の意を表明。2014年5月に大統領選挙を控え、政府に対する働き掛けが実を結んだことに安堵(あんど)している(当地経済紙「ポルタフォリオ」2013年11月27日)。

当地では昨今「魔法のリアリズム(El Realsimo Magico)」と銘打った観光客誘致プログラムが進められており、PROEXPORTはスペインのマドリードで2014年1月に開催された観光誘致展示市「FITUR 2014」の視察のため、30社のコロンビア観光企業を送り込んだ。マリア・クラウディア・ラクチュールPROEXPORT総裁は「スペインの取り組みを学び、より多くの外国人観光客を増やすことが今後の使命」と明言、政府の新規則制定を後押しし、観光新興国としての体制を整えつつあることをアピールした。

<違法宿泊施設の増加などが懸念>
一方、政令2646号が公布されても、国内に住むコロンビア人はIVAを負担しなければならず、また外国人観光客の増加に伴う違法宿泊施設の増大も懸念される。コロンビア観光ホテル協会によると、現在も当地宿泊施設の35%は違法に営業されているという。

政令2646号は、大きな雇用を生み出している宿泊サービス・飲食業業者のための救済策、また観光新興国をアピールする重要な機会となったものの、商用目的で入国する外国人には予期せぬ負担を強いられることとなった。

(安心院茉里)

(コロンビア)

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