新たな社会保障制度を発表−失業補償、住宅ローン返済支援など盛り込む−
リヤド事務所
2014年01月24日
政府は、サウジアラビア人向けの失業補償や住宅ローン返済支援などを含む新たな社会保障制度を1月6日の閣議で決定し、その概要を発表した。一連の制度拡充の背景には、大きな改善がみられないサウジ人の失業率に配慮し、民間部門への就業を促進する目的があるとされている。
<59歳未満のサウジ人従業員が対象>
失業補償の導入は、増大するサウジ人若年層に対して民間企業への就業に関心を向けさせるためで、アデル・アル・ファキーフ労働相は「現在民間セクターで働く150万人のサウジ人に、より質の高い社会保障を提供することになる」と、当地英字紙「アラブニュース」(1月8日)に語っている。同紙は、2013年のサウジ人の失業率は11.7%と報道しているが、就労可能人口の4割程度しか実際には就業していないとの分析もあり、雇用創出余力の大きい民間部門への関心を高め、就業促進を社会保障制度面からも政府が後押ししていくことが必要とみられている。
この新制度はサウジ社会保険庁(GOSI)に登録する59歳未満(定年まで12ヵ月以上を残している)の全てのサウジ人従業員に適用される。具体的な失業補償としては、失職前2年間の平均給与の60%が3ヵ月分〔上限月額9,000リヤル(約25万2,000円、1リヤル=約28円)〕、50%が9ヵ月分(上限月額7,500リヤル)、計12ヵ月分支給される設計となっている。保障の最低月額は2,000リヤルとされ、副業や投資活動による収入がある者、就業期間が1年に満たない者、本人の都合により退職したケースについては補償の対象にならない。
補償の財源としては、従業員と雇用主がそれぞれ給与額(基本給プラス住宅手当)の1%を追加的にGOSIに拠出する。サウジ人従業員は、これまでも給与額の9%(雇用主は11%)を社会保障費としてGOSIに支払ってきたが、失業補償を含む新制度がスタートすると、給与額の10%(雇用主は12%)を支払う義務が生じる。サウジ人雇用が義務付けられる中、当地でビジネス活動を行う外国企業にとっても新たなコスト追加要因となる。
<2014年6月めどに運用を開始>
発表された内容には、学生が通学時の事故などで死亡または障害を負った際に、その家族に対し一律10万リヤルを支給することや、住宅ローンを抱えたまま夫の死亡や離婚により社会的に弱い立場に置かれた女性に対するローン返済支援についても、制度が適用されている。国民に対する社会保障の充実は政府にとって優先度の高い政策になっている。新たな社会保障制度は2014年6月をめどに運用が開始される予定だ。
(庄秀輝)
(サウジアラビア)
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