貿易での成功事例を両国企業が共有−日仏パートナーシップセミナー(1)−

(フランス)

パリ事務所

2014年01月23日

ジェトロ、フランス企業振興機構(ユビフランス)、対仏投資庁(AFII)は2013年12月17日にパリで、「貿易」「投資」「研究開発(R&D)」の3分野における日仏パートナーシップの成功事例を共有するセミナーを開催した。2回に分けて報告する。まずは「貿易」について。

<継続的な互恵的パートナーシップの進展に期待>
同セミナーは、フランソワ・オランド大統領が2013年6月に訪日した際、日仏間の貿易投資拡大に向けた連携を強化するため、ジェトロ、ユビフランス、AFIIが覚書(MOU)を締結、それに基づく活動の一環として開催された。日仏の企業経営者ら158人が参加した。プログラム講演資料は、ジェトロウェブサイトで参照できる。

冒頭、ユビフランスのクリストフ・ルクルティエ最高経営責任者(CEO)は、共通課題を持つ両国による恒常的な協力関係の進展は双方に有益だとして、セミナーで日仏企業が率直に対話し経験を共有することを期待すると述べた。

続いて、ルイ・シュバイツァー日仏パートナーシップ担当フランス外相特別代表が、日仏は地理的・文化的に遠く、言語や規格・品質管理面での違いによりビジネスが複雑になっているが、パートナーシップにより克服可能であり、多くの成功例があるとした。また、日本企業はパートナーを探す場合、フランス企業を念頭に入れないことが多いが、検討するべきだと述べた。さらに、かつてシュバイツァー氏自身が会長兼CEOを務めたルノーが日産へ持ち掛けたアライアンスがうまく機能しているのは、いかなる時も互恵関係を徹底する原則があるからだとした。

鈴木庸一駐フランス日本大使は、2013年6月の日仏共同声明で「特別な」パートナーシップという文言が使われたのは、日仏関係が近くて遠いとの認識が依然あるためと強調。さらに「日仏とも諸外国から市場が閉鎖的との印象を持たれている。日EU経済連携協定(EPA)は規制改革面でも重要。もし日本の規制に具体的問題があり、日本政府が解決可能であればお助けしたい。貿易投資上の課題であれば日仏企業間で助け合うことが可能。(市場が閉鎖的であるというのが)感覚的な印象にすぎないなら本日のセミナーがヒントになる」と述べた。

<それぞれの強みを生かした相互補完が可能>
「交差する視点(比較)」と題するパートにおいて、フロランス・ジャンブラン=リスレー駐日フランス経済公使は、アベノミクスや日仏貿易投資関係を解説した。さらに、日本によるEUを含む諸外国との自由貿易協定の交渉状況を「過去に例がない。日本の決意がみられる」と紹介した。さらに、アジアにおける先駆者である日本との連携は有効との見解を示し、フランス側の日仏パートナーシップによるメリットとして「バリューチェーンに食い込める」「第三国でのイノベーション、R&Dにおいて相互補完できる」ことを挙げた。

片岡進・経済産業省製造産業局繊維課長は、両国政府が設置を合意した日仏繊維協力ワーキンググループの第1回会合が2013年3月に開催され、日本の高性能・高機能繊維と、フランスが得意とするその適用を結び付ける試みが進行中だと述べた。また「フランスのテキスタイル市場は細分化され小規模で高利益が見込めないため、日本企業にとって参入が難しいが、(世界に向けた発信力を持つ)フランスで受け入れられれば、新興諸国での展開の足掛かりとなる」との期待を示した。

<貿易で躍進狙う日仏企業>
壁面緑化システムを取り扱うカネバフロールのパスカル・ペレセザック社長は、「3〜4年前から大和リースへ壁面緑化システム技術をライセンス供与しているが、日本で加えられた改善をフランスで採用するなど、日本から学ぶこともある」と述べた。さらに、日本でのビジネス立ち上げで重要だったのは「人との出会い、人と人とのコンタクト」だったと強調した。今後は日本企業と協力し、ASEANでもビジネスを展開したいとの展望を明かした。

SaaS型(注1)アプリケーションソフトを開発・販売するニーディーズのドゥニ・プラ社長・共同創立者は「日本のクラウド市場は米国に次ぐ大きさで成熟しており、アジア向けの拠点としての優位性にも着目し、ジェトロの支援を得て日本進出を決定した」「販売実績はまだないが、グーグルアップス(注2)認定リセラー(販売代理店)とのパートナーシップにより、顧客とコンタクトを取りたい」と述べた。

3年前から南部鉄器の急須のフランス向け輸出に取り組む、岩手県の及源鋳造の及川久仁子代表取締役は「商品開発におけるフランスのデザインセンスの素晴らしさや、フランスにおける日本文化への関心、高品質商品への理解の高さに触れ、感謝し学んでいる」と述べた。今や輸出の4割をフランスが占めるという。さらに、「これから提案すべく準備中である環境に優しい鉄鍋『NakedPan』を、フランスのシェフにも使っていただきたい」と述べた。

さらに、精密機器産業が集積する長野県・諏訪地域にある高島産業の小口武男代表取締役社長は、ジェトロの地域間交流支援事業(RIT事業)への参加を契機に交流を開始したオートサボア県の公設企業支援・技術センターである産業切削技術センター(CTDEC)を技術パートナーと捉えて、自社の機械をCTDEC内に設置していると述べた。今後の展望として「CTDECへ寄せられる技術的課題にソリューションを提案したい」「欧州市場へ機械を販売するべく、ディストリビューターとの関係を構築したい」と語った。

(注1)「Software as a Service」の略。インターネットなどのネットワークを通じて、ユーザーにアプリケーションソフトを提供するサービス。
(注2)「Google Apps」(グーグルアップス)は、Google が提供するビジネスユーザー向けのグループウエア。

(鈴木謙次郎、上田暁子)

(フランス)


投資交流、R&D協力の促進に期待高まる−日仏パートナーシップセミナー(2)−

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