新会社法が施行、1コルナで有限会社が設立可能に−公証人による法人登記で所要時間も短縮−

(チェコ)

プラハ事務所

2014年01月21日

1月1日から新会社法が施行された。これにより、有限会社の設立に必要な最低資本金が20万コルナ(約102万円、1コルナ=約5.1円)から1コルナに引き下げられたほか、法人登記手続きに要する時間を大幅に短縮することが可能となった。

<最短24時間程度で登記完了に>
同法は、2012年にペトル・ネチャス内閣(当時)が企業活動に関する制度の簡素化、企業のビジネス環境改善を目的として起案、成立させた。草案当時に法相を務めていたイジー・ポスピーシル氏(市民民主党)は同法について、「中小企業、あるいは大企業にとっても、法制度の点でより魅力的なビジネス環境にするものだ。従来の法律を劇的に書き換えるものとはいえないが、ドイツ、英国、フランス、オランダ、ポーランドなど他の欧州諸国の概念をある程度取り入れ、チェコ国内の会社法制度に国際競争力を持たせている」と説明している。

特に会社設立に関しては、有限会社設立の最低資本金が20万コルナから1コルナへ引き下げられたほか、具体的な手続きも簡素化された。これは、会社法に付随して改正された「法人、個人の公的登記に関する法律」で定められたもので、同法は法人登記簿への記載を公証人が行うことも認めている。旧法では、登記できるのは裁判所に限られていたため、企業は登記公証済み書類を地方裁判所に提出し、裁判所が登記を行うまで待たなければならなかった。法律改正により、裁判所の手続きが軽減され、公証人が公証印を押印すると同時に登記可能になったため、必要書類提出から登記が完了するまでの期間は、最短で24時間程度に短縮された。

国内公証人の産業団体および企業団体は、この変更を歓迎している。チェコ経済会議所はスポークスマンを通して、「登記作業は、これまで5営業日かかることもあったが、公証人に権限を与えることで24時間、あるいはそれ以下に短縮されることが予想される。経済会議所は、所要時間の短縮、公証人事務所で全手続きが済むという事実を歓迎している」と述べた。さらに公証人を利用することの利点について、「裁判所は現在、非常に多忙な状況にある。これに対して公証人は、一般に裁判所よりは時間的余裕があるため、登記申請者の個別相談にも応じることができると考えられる」と説明している。

<経営体制の一元化を導入、二元方式と並存>
新会社法はこのほか、株式会社設立や経営組織体制に関して、従来の取締役会と監査役会から成るいわゆる二元方式に加えて、法定取締役と管理委員会から成る一元方式を導入することも可能にしている。一元方式では、管理委員会が従来の取締役会のほか監査役会の機能も果たす。また管理委員会は、法定取締役を任命するが、管理委員長が兼任することもできる。

新会社法を草案した法律家ボフミル・ハベル氏は、一元方式導入で特に株主の少ない中小企業の設立が増え、経営体制が簡素化される、と指摘している。従来のシステムはドイツの制度に近く、新たに認められたシステムは米国や英国などで採用されている形態に近い。このため、外国企業がチェコで企業を設立する場合、より多様なシステムを選択できるようになった。

一方で、一元方式導入の場合、1組織が執行と監査の2つの機能を持ち合わせることになるため、監査機能が弱まるのではないか、との懸念も出ている。

<経営陣の責任強化も明記>
さらに新会社法では、取締役と管理委員の責任も強化されている。当該条項には「企業の健全な経営の管理義務を怠った場合、責任を負う者はこの行為で得られた利益を返還、あるいはこれが不可能な場合には金銭にて賠償する義務を負う」と明記されている。また、取締役あるいは管理委員の業務不履行が会社の破産に関連する場合、その責任の重大さや範囲に応じて、裁判所は当該企業の破産手続きの過程で、当該管理委員の委員会からの除名、取締役・管理委員の就任禁止、債務返済などの義務を課すことができる旨も記されている。

これらの規定により、企業の間では新法施行以降、管理職のリスクが高まったとの警戒感が出ている。これに対して、新会社法の草案づくりに関わった法律家カレル・エリアーシュ氏は「従来の法律も、健全な経営の保護の見地から制定されたものだった。新会社法はこれをさらに明文化したにすぎない」と説明している。

(中川圭子)

(チェコ)

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