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多様な参入方法があり、メリットとリスクの見極めを−アジアの卸小売りと物流への外資規制(2)−

(タイ)

バンコク事務所

2014年01月16日

外国人事業法の定める外資規制では、外資の出資50%未満の在タイ合弁会社はタイ法人となり、同社からの2次投資を受けることで、実質持ち分では外資が過半数を保有するタイ会社を設立できる。また、タイ側パートナーへの優先株の発行により、実質的な経営権を外資が握る方法なども取られることが多い。出資形態にさまざまな選択肢がある一方、スキームによっては法律違反となるリスクを伴うことから、事前調査の段階で、検討する事業内容に最も適した形態を入念に見極める必要がある。タイの後編。

<実質的には外資が過半数の持ち株を保有する場合も>
外国人事業法の定める「外国人」の定義は、「外国人もしくは外国企業が50%以上を保有する法人が資本の50%以上を有する法人」となっている。これに従えば、タイ人もしくはタイ法人が過半数を出資する法人の孫会社は、タイ法人と見なされる。

そのため、タイ国内の卸売業、法律、会計などのサービス業においては、日本企業が49%を出資し、残る51%については在タイ日系合弁企業(タイ資本が過半を出資、注)からの出資を受け、タイ法人としての合弁事業会社を設立する手法が取られることも多い。この手法により、実質持ち株比率では日本側資本が過半数を占めるにもかかわらず、外国人事業法の規制を受けずに事業展開ができる(図1参照)。

図1在タイ合弁会社を活用した法人設立の一例

また、この手法による法人設立形態の場合、日系金融機関がタイ国内に有する投資会社などが、出資者としてのタイ法人(図1のタイ法人B)の役割を果たすケースも多い。その際、1つの投資会社ではなく、複数の投資会社が50%超の株式を分担して保有するのが一般的だ。これについて、現地日系法律事務所は「日系企業が実質的な過半数株を保有したい場合、投資会社を活用したスキームは、出資元の信頼性などの観点からみれば、リスクが少ない投資手法の1つだ。ただし、出資者である投資会社に対しては通常、出資額に対して一定比率のコンサルタント料の支払いが生じるため、コストと効果を入念に見極める必要がある」と話している。

<優先株式による実質的な経営権確保は将来的なリスクとの見方も>
また、外国人事業法の定める出資比率は、あくまで株式数または株式の価値基準で判断され、議決権比率は勘案されていない。そのため、パートナーであるタイ側に優先株を発行し、資本上は日本側49%、タイ側51%としながらも、例えばタイ側の1株当たり議決権を日本側の株式の10分の1に設定することにより、実質的な経営権を日本側が握るという手法が取られることもある(図2参照)。

図2在タイ合弁会社を活用した法人設立の一例

他方、現地大手法律事務所のタイ人弁護士は、優先株式を発行した外資による実質的な経営権の保有について、現行のタイの法律では可能と判断されるものの、その手法によっては、外国人事業法において処罰の対象となる「名義貸し」に抵触するリスクがあると指摘する。

外国人事業法の第36条は「タイ人が名義貸しすることにより、外資規制を逃れる行為」を禁止している。同弁護士によれば、「同法において名義貸しを禁止している趣旨は、実質的な経営に参加しない企業もしくは個人による形式的な出資を規制することにある。名義貸しに当たる行為の明確な定義や判断基準はないため、趣旨から解釈すれば、優先株スキームの採用には慎重にならざるを得ない」という。

<条例や協定を通じた特別扱いにも>
そのほか、2国間の条約や協定により、外国人事業法の適用除外規定が盛り込まれる例もある。例えば、米国との関係においては、1966年に締結されたタイ米修好経済条約により、一部の例外業種を除き、米国企業に対する内国民待遇が与えられている。

具体的には、通信、輸送、信託、預金を伴う銀行、土地・天然資源の開発、タイ固有農産品の国内向け取引、の6業種を除いては、米国企業(米国籍者)に対して、タイ企業(タイ国籍者)と全く同じ条件でビジネスを行うことを認めている。要件としては、(1)取締役の過半数がタイ国籍もしくは米国籍であること、(2)会社代表署名権限を保有する取締役はタイ国籍もしくは米国籍であること、のみが求められる。

条約締結から50年近くが経過した現在においてもなお、運用ベースで、外国投資法で制限する43業種のうちの多くの業種が、米国企業に対してはほぼ無条件で開放されているのが実態だ。競争上、日系企業を含む他の外国籍企業に比べ、かなり有利な条件を勝ち取っているといえよう。

一方、日本企業に対しては、日本とタイが締結している日タイ経済連携協定(JTEPA)に基づき、サービス分野については、小売り・卸売りサービスおよび修理・メンテナンスにかかる製造業関連サービスの一部について、外資規制が緩和されている。具体的には、(1)タイで生産された製品のうち、一定の条件を満たせば、製造業者・グループ企業が自社グループの製品を卸売り・小売りする場合は75%まで、(2)製造業者・グループ企業がメンテナンスや修理などのアフターサービスを提供する場合は60%まで、の範囲で出資が可能となっており、政府の事前認可を受けなくても、外国人事業法の規定する50%未満の条件を上回る出資が認められている。

ただし、現地日系法律事務所弁護士によると、「JTEPAで認められているサービス業への外資規制緩和は、その業務範囲が極めて限定的なため、将来的なビジネス展開を見据えた場合、限られた業務範囲を逸脱できないことが足かせになる可能性がある」という。出資の段階では本来の上限を超えた出資ができるメリットと、ビジネス領域が限定されるデメリットを十分に比較検討した上で、出資比率を決定する必要があろう。

(注)日本の銀行が出資する投資会社などが活用されている。

(伊藤博敏)

(タイ)

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