GDP成長率は企業投資の回復で1.1%に上昇−2014年の経済見通し−

(ベルギー)

ブリュッセル事務所

2014年01月09日

2014年の実質GDP成長率は1.1%になることが見込まれる。しかし、労働市場の構造的な問題を背景として、失業率は上昇する見通しだ。政府は、財政赤字の削減に加えて国際競争力の向上を目標に掲げているが、2014年5月の総選挙で政権が変わる可能性もある中、今後の見通しは不透明だ。

<失業率は今後も上昇の見通し>
ベルギー国立銀行(NBB)は、2014年の実質GDP成長率を1.1%と見込む。ユーロ圏の債務危機を背景として2012年の成長率はマイナス0.1%を記録したが、2013年には個人消費の回復を受け、0.2%のプラス成長に転じ、辛うじてマイナス成長を脱する見通しだ。2014年は企業による投資がプラスに転じ、さらに成長率を押し上げるとNBBは予測している。

ただし、失業率は今後上昇する見通しだ。これは構造的な問題によるところが大きい。ベルギーの労働コストは欧州域内でも高く、平均賃金は1時間当たり37.2ユーロ(2012年、ユーロスタット)と、スウェーデン(39.0ユーロ)やデンマーク(37.5ユーロ)に次ぐ高水準だ。ベルギーの法律では、賃金は物価スライド方式(インデクゼーション)によって毎年自動昇給することが定められており、企業にとって人件費が足かせとなっている。OECDやIMFは、ベルギー労働市場の改革の必要性を指摘している。

<財政赤字の削減は難しい状況に>
政府は、財政収支の改善と国際競争力の強化を目標に掲げる。財政収支については、2013年の財政赤字はGDP比で2.8%と、前年の4.0%から縮小したが、中長期的には人口高齢化に伴う年金および医療費の増加が見込まれており、緊縮財政策の先行きは不透明だ。税制は法人税が33.99%、付加価値税(VAT)が21%と欧州域内でも高水準のため、増税によって財政収支を改善させるのは難しい状況にある。

国際競争力の強化については、インデクゼーションによる自動昇給制度の一部見直しや、労働市場の改革を推し進めることで、実現したい考えだ。他方、2014年からは解雇法など労働関連法令を改正し、ホワイトカラーとブルーカラー間で異なる雇用条件を是正する方針だ。

<5月の総選挙で注目される地域主義政党>
2014年5月には総選挙が予定されている。国内は産業が集積する北部フランダース地域と経済力で劣る南部ワロン地域とに二分されており、既に連邦政府から各地域政府に対して多くの権限が委譲されている。フランダース地域の域内総生産(GRP)がワロン地域のGRPの約2.5倍と経済格差が大きいことを背景として、地域主義政党である新フランダース連合(NV−A)が前回の総選挙で躍進しており、次回総選挙での議席数の伸びに注目が集まる。

主要経済指標

(広木拓、ロラン・デルグランデ)

(ベルギー)

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