マイナス成長からの脱出を政府は期待−2014年の経済見通し−

(オランダ)

アムステルダム事務所

2014年01月09日

経済政策分析局(CPB)は、2014年の実質GDP成長率を0.5%と予測し、2012年、2013年と続いたマイナス成長から脱するとみている。輸出の伸びが拡大する一方、個人消費の減退は続く見込みだ。欧州委員会、OECDはCPBに比べ輸出の伸びを低くみるなど、厳しい見方をしている。マイナス成長から脱するには、輸出をどれだけ伸ばせるかがカギとなるだろう。

<2014年は0.5%のプラス成長に転換の予測>
CPBは政府の2014年予算案の発表に併せ、2013年9月17日に経済予測を発表した。その中で、2013年の実質GDP成長率がマイナス1.25%となった後、2014年は0.5%のプラス成長に転じると予測している。

CPBは、輸出の伸びが前年比2.75%(2013年)から4.25%(2014年)に加速し、総固定資本形成も11.0%減から1.75%のプラスに転じるとしている。一方、個人消費は2.25%減から1.0%減とマイナスが続くとみる。賃金上昇率(1.5%)は物価上昇率(2.0%)に届かず、実質賃金・購買力の低下が続く見通しだ。失業率は2013年の7.0%から2014年は7.5%と悪化する見込み。また、政府は2014年度予算に総額60億ユーロの歳出削減策を織り込んでいるが、CPBによると、これはGDPを0.25%分押し下げるという。

<冷え込み際立つ消費マインド>
個人消費の減少は4年連続となるが、実質賃金・購買力の低下が続く中で労働市場も悪化しており、先行き不透明感から消費意欲が大きく減退している。消費者信頼指数(今後1年の家計の見通しについて、ポジティブな回答からネガティブな回答を引いたDI値)は、マイナス30〜マイナス20と非常に低い水準で推移している。ベルギーではこの数値がマイナス5〜0の範囲で、ドイツでは0〜5の範囲で推移しており、オランダの消費マインドの冷え込みが際立っている。

住宅市場の不調も、消費減退の大きな原因となっている。住宅価格は1980年代後半から20年以上右肩上がりで上昇を続けたが、2008年のリーマン・ショック以降は低下を続けている。住宅価格が購入時の価格を下回り、含み損を抱えている世帯は少なくない。数年間続いた住宅価格の低下について、CPBは2014年中には底を打つとしている。

<欧州委とOECDは輸出回復に厳しい見方>
2013年12月9日にオランダ国立銀行は2014年の経済成長率を0.5%とする経済予測を発表、CPBと同様の見方を示している。一方、欧州委は11月5日に発表した経済見通しで0.2%、OECDは11月19日の発表でマイナス0.1%とCPBに比べ厳しい見方をしている。いずれも個人消費の減退が続く(欧州委は1.1%減、OECDは1.6%減と予測)中で、輸出の伸びをCPBに比べ、低くみているためだ(欧州委は3.2%、OECDは2.7%と予測)。マイナス成長から脱することができるかどうかは、ユーロ圏の景気回復などを生かして輸出をどれだけ伸ばせるかにかかっているようだ。

主要経済指標

(立川雅和)

(オランダ)

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