激しい衝突は回避も、事態は膠着状態−反政府デモ隊の指導者ステープ元副首相は活動継続を示唆−

(タイ)

バンコク事務所

2013年12月04日

12月3日、首都圏警察本部や首相府での治安部隊と反政府デモ隊の激しい衝突は避けられたが、反政府デモの指導者であるステープ元副首相は反政府活動の継続を示唆している。平和的な解決を目指すとする政府との間で、予断を許さない状況が続いている。

<首都圏警察本部・首相府での最悪の事態は回避>
反政府デモ隊は12月3日午前、反政府デモ隊の指導者であるステープ元副首相の2日夜の呼び掛けに応じ、首都圏警察本部へ向かい行進を開始した。治安部隊との激しい衝突が予想されたが、警察が本部敷地内への立ち入りを許したため、負傷者が出るなどの最悪の事態は避けられた。その後、デモ隊は首都圏警察本部に近い首相府に殺到した。前日、激しい攻防が繰り広げられた首相府前の交差点では、警察側の協力もあって、午前11時ごろにコンクリートのバリケードが排除された。午後になって警察が首相府敷地内への立ち入りを許したため、ここでも激しい衝突は避けられた。

首都圏警察本部の敷地を占拠するデモ隊
首都圏警察本部前で勝利宣言するターウォン・セニアム前民主党議員
デモ隊のブルドーザーにより撤去される首相府前のバリケード

<インラック首相、「人民フォーラム」の開催を指示>
現地紙(「バンコク・ポスト」電子版12月3日午後2時)によると、3日午後、インラック首相は閣僚らに、長く続いている政治混乱を解決するために、法律の専門家や学識者を招いて議論する「人民フォーラム」の準備をするよう指示した。インラック首相はポンテープ副首相とチャイカセム法相を担当に任命し、全ての当事者を呼んで、話し合いと他の平和的な方法により反政府活動を終結させるよう指示した。

一方、ステープ元副首相は12月3日午後2時ごろ、バンコク郊外の政府合同庁舎で、「首都圏警察本部と首相府の敷地を占拠しただけでは、われわれの使命は終わらない。部分的な勝利を祝うこともできるが、油断してはいけない」と演説した。加えて同氏は、デモ活動を終わりにするには、インラック首相の辞任や国会の解散では不十分で、国からタクシン元首相の影響を根絶するまで続ける必要がある、との考えを明らかにした。

これに対し、インラック首相は12月3日午後5時、(1)12月5日の国王誕生日の準備には万全を期しており、それは国民が1つとなる機会となる、(2)軍、警察が暴力的な措置を取らず、問題解決のために職責を果たしているため、緊張がやや緩和した、(3)学界、ビジネス界、反政府側、全ての国民が「人民フォーラム」に参加して解決策を考えてほしい、との声明を発表した。

12月5日の国王誕生日に向けて事態の収束が期待されたが、12月3日時点でステープ元副首相は反政府活動の継続を示唆している。一方、インラック首相はあくまで話し合いなどによる平和的な解決を目指すとしていることから、国王誕生日を控えデモは一時的に収まっているものの、事態は膠着(こうちゃく)しており、引き続き予断を許さない状況だ。

(伊藤博敏、若松寛)

(タイ)

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