デモ隊と警察隊が衝突、事態は緊迫化

(タイ)

バンコク事務所

2013年12月03日

インラック首相は12月2日、自身の辞任や国会解散の用意があることをテレビ演説で明らかにしたが、タクシン体制の根絶を目指す反政府派のデモは先鋭化し、首都圏警察本部の占拠へ乗り出している。国内治安情勢の監視・維持を担う治安情報監視センター(CAPO)の責任者に就任したスラポン副首相兼外相は12月2日、状況が改善されない場合、国際的な規範と基準により、法執行のため適正な手段を取る、との姿勢を示し、先鋭化する反政府デモを牽制した。

<先鋭化したデモ隊と警察の衝突が激化>
12月1日夜、反政府デモ隊のリーダーであるステープ元副首相から、2日以内に国民に主権を返すよう最後通告を受けたインラック首相は、翌12月2日にテレビで演説を行い、国民に対して、(1)首相の辞任や国会の解散についてはいつでも用意がある、(2)国民に主権を返す、すなわち反政府グループの主張する人民会議の設立については、憲法違反であり実現できない、(3)反政府グループは、憲法に従い、話し合いによる適切な解決方法を模索すべき、との主張を伝えた。

また、「辞任や解散が受け入れられないならば、憲法の下で、果たしてどのような解決策があるというのか。政権は権力に固執しておらず、ただ平和的な解決を模索している」と、政府として法的な打開策を取りようがない窮状を訴えた。

しかし、「タクシン体制の根絶」をスローガンに掲げる反政府デモ側は、「首相の辞任や国会解散では事態は解決しない」というステープ元副首相の言葉どおり、多くの市民を巻き込んだデモ活動を継続。12月2日午後には、先鋭化したデモ隊の一部が首相府および首都圏警察本部周辺で警察部隊と衝突し、投石や火薬類の投げ込み、放火など徐々に行動をエスカレートさせた。これに対して警察部隊も、催涙ガス弾や放水、ゴム弾による鎮圧作戦を実施し、現場では緊迫化の様相が強まった。12月2日夜の保健省の発表によると、同日の衝突により、1日で約100人の負傷者が出た。

このような状況下、12月2日にCAPOの責任者に就任したスラポン副首相兼外相は、同日午後の外国大使館への事情説明で、「政府は(デモ隊への)武力行使を最大限に抑制し、平和的な事態改善に努めている。ただし、今後も状況が改善されない場合、国際的な規範と基準により、法執行のため適正な手段を取ることになる」と述べ、状況に応じた措置を講じる用意があることを伝えた。

<首都圏警察本部の制圧を宣言>
12月2日午後9時、ステープ元副首相はバンコク郊外の政府合同庁舎で演説を行い、(1)12月3日は、早朝から首都圏警察本部にデモ隊を集結させ、午後3時までに占拠すること、(2)首都圏警察本部を管理下に置き、腐敗した警察機構を改革すること、を宣言した。

12月2日時点において、既にデモ隊と警察部隊との間の衝突による負傷者が多数発生する状況下、大規模デモ隊が首都圏警察本部の制圧に動けば、警察部隊との衝突がさらに激化することも予測され、予断を許さない事態が続いている。

(若松寛、伊藤博敏)

(タイ)

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