改正雇用法が成立、幹部・専門職種も基本保護規定の適用対象に
シンガポール事務所
2013年11月26日
改正雇用法が11月12日、国会で可決・成立し、同法の適用対象となる事務職の給与上限が引き上げられるとともに、幹部・専門職種も不当解雇や有給休暇など基本保護規定の対象となった。この結果、新たに約45万人の労働者が同法の適用対象となる。改正雇用法の大半は、2014年4月1日から施行される。
<専門・管理・幹部職種の増加が背景に>
雇用法はこれまで適用対象を原則、月給4,500シンガポール・ドル(約35万5,500円、Sドル、1Sドル=約79円)以下の工員・作業員と、月給2,000Sドル以下の事務職などの非工員・作業員としていた。今回の改正により、非工員・作業員(事務職)について、雇用法第4章に規定されている労働時間や休日など基本権利の適用対象となる給与上限を、月給2,000Sドル以下から2,500Sドル以下へと引き上げた。また、不当解雇に対する異議申し立てや、有給休暇、病欠など基本保護規定の対象に、月給4,500Sドル以下の専門・管理・幹部職種(PME)も含める。PMEについてはこれまで、基本給の要件のみが適用対象となっていた。雇用法の改正の結果、新たに約45万人の労働者が同法に基づく保護対象となる。
タン・チュアンジン人材相代行は11月12日の国会審議で、雇用法改正について、「第1に保護対象となる労働者を増やし、第2に経営上合理性のある点については雇用主にも融通性を与え、第3には同法の執行力を強化する」のが目的と述べた。同代行は、非工員・作業員の対象を月給2,500Sドル以下と上限を引き上げた理由を、平均給与の上昇に合わせたものだと説明した。また、PMEを新たに対象に加えたことについて、同代行は「地元労働者に占めるPMEの割合が、10年前の27%から31%へと拡大したためだ」と指摘した。さらに、整理解雇の際の解雇手当の対象について、1人の雇用主の下での就労年数が短縮化している現実を考慮し、勤続3年以上から2年以上へと短縮することになった。
<給与未払いの罰金、初犯で最高1万5,000Sドルへ引き上げ>
今回の改正法で前述の同代行が述べた雇用主への配慮については、非工員・作業員の適用対象者を月給2,500Sドル以下に拡大したが、超過勤務(残業)手当の計算基礎となる月給の上限を2,250Sドルとしている。さらに、PME(月給4,500Sドル以下)で不当解雇の異議申し立てができるのは、勤続1年以上の者との条件を付けた。
執行力強化については、給与未払いの雇用主への罰則が、これまで初犯の場合「最高5,000Sドルの罰金、または最高6ヵ月の禁錮刑」だったのを、改正法では「3,000〜1万5,000Sドルの罰金、または最高6ヵ月の禁錮刑」へと罰金の上限を引き上げた。このほか、人材省の検査官に給与未払いの違反者を逮捕する権限や、社内の立ち入り検査を行う権限を与えた。
なお、改正雇用法の大半は、整理解雇手当を除いて2014年4月1日から施行される。今回の改正の主なポイントは表のとおり。詳細は人材省ウェブサイト参照。
<給与明細の発行義務化は見送り>
一方、今回の改正法に盛り込まれる予定だった雇用主への給与明細書の発行と雇用記録の義務化は見送られた。同代行は、改正に際して雇用主から意見募集を行った結果、小規模店主を中心に中小企業から強い反対があったと説明。「全てを一度に法制化するのではなく、持続可能な方法で最終的に雇用主の行為を変えていきたい」と述べ、今後段階的に導入していく方針を示した。人材省は第一歩として、2014年第1四半期中に、給与明細と雇用記録に関するガイドラインを発表する予定。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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