シドニーで対日ビジネス促進シンポジウムを開催

(オーストラリア)

シドニー事務所

2013年11月26日

ジェトロは11月7日、対日ビジネス促進シンポジウム「The AWAKENING(日本の目覚め)」をシドニーで開催した。日本における新たなビジネス分野としてインフラ、医療関連産業が注目されていることが紹介され、出席者は日本市場や日本でのビジネスなどについて活発に質問し、日本に対する関心の高さがあらためてうかがわれた。

<日豪関係は「補完」から「協働」へ>
シンポジウムには、日本とのビジネス構築を模索するオーストラリアの金融サービス、法務、コンサルティング分野のビジネスパーソンや有識者ら約140人が出席した。日本側スピーカーが、アベノミクスによる3本の矢のうち第1の矢である「大胆な金融政策」、第2の矢である「機動的な財政政策」が経済浮揚効果を発揮し、第3の矢である「日本再興戦略」によって日本経済が復活を遂げつつあると紹介。特に「日本再興戦略」では、以下の3点がオーストラリアにとってのビジネスチャンスになるとの見方が示された。

(1)民間投資と人材育成:資本投資、女性の雇用や日本人留学生の拡大
(2)貿易促進と対内直接投資:自由貿易協定(FTA)、対日投資や訪日外国人数拡大
(3)新たな市場:官民連携(PPP)/民間資金活用によるインフラ整備(PFI)や医療関連産業市場拡大

オーストラリア側スピーカーは、貿易、投資、文化などのさまざまな分野における日豪関係は不変だとの認識を示し、その上で例えばこれまでのように天然資源などの一次産品をオーストラリアから日本に輸出し、日本から自動車などの製品を輸入するという「補完関係」から、オーストラリアのPPPにおける官民協働やPFI分野における豊かな金融資産運用実績の経験を通じ、両国関係を「協働関係」に変化させていくことが重要だと指摘した。また、両国が迎える高齢化社会は医療関連産業市場を拡大させるので、両国間協力の新たな分野となるとの期待を示した。

<日本でのビジネスでは信頼関係の構築が重要>
日本でのビジネスの進め方に関するパネルディスカッションでは、日本側パネリストから、日本でビジネスを行うに当たっては信頼関係を構築することが重要で、自分自身のビジョンを語り共有すること、市場参入に際しては自社の強みとターゲットを絞ることが必要だとのアドバイスがなされた。

既に日本でビジネスを展開するオーストラリア企業も、信頼関係の構築が重要だと指摘したが、それには早期かつ高頻度での交流が必要で、時間がかかると語った。また日本の市場は大きく、その需要を手に入れることが成功への近道だとの認識を示す一方、競争は激しいが自社製品の品質に自信を持ち、日本製品の品質が高過ぎるとの固定概念にとらわれないことが重要だ、と実体験に基づく日本市場でのビジネスの利点や難しさについて言及した。

2012年末の日本からオーストラリアへの直接投資残高は612億オーストラリア・ドル(約5兆7,528億円、豪ドル、1豪ドル=約94円)と、オーストラリアでは3位の投資国である一方、オーストラリアからの直接投資残高は2億豪ドルにとどまり、日本におけるオーストラリアのビジネスプレゼンスはあまり大きくない。今回のシンポジウムでは、日本経済の復活、日本市場の魅力や今後の日豪協力分野について活発な意見や質問が出され、日本に対する関心の高さが再確認された。

オーストラリア企業の関心事項は、PPP/PFIによるインフラ協力や医療関連市場の拡大であり、日本政府が掲げる「日本再興戦略」の課題と一致する。また、2020年の東京五輪の開催はオーストラリア企業にとってもビジネスチャンスとなると当地ではみられている。

(平木忠義)

(オーストラリア)

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