WTO協定に基づき自動車リサイクル税制度を改正、発効は2014年1月1日

(日本、EU、ロシア)

モスクワ事務所

2013年10月24日

EUや日本をはじめとする諸外国から、WTO協定に整合するかたちでの制度改正を要請されていたロシアの自動車リサイクル税制度について、プーチン大統領が10月21日、改正法案に署名した。同改正法の発効は2014年1月1日からとなっており、これまで特定の条件の下で同税の支払いが免除されていた国内メーカーに対しても、輸入の場合と同じ条件で同税が徴収されることになる。

<国内メーカーにも輸入車と同じ条件で課税>
プーチン大統領は10月21日、2012年9月1日から導入された自動車リサイクル税制度(2012年8月7日記事参照)のWTO協定に基づく改正を目的とする連邦法第278−FZ号「連邦法『製造と消費によるスクラップについて』第24.1条の修正について」に署名し、10月23日に公布された。同法の発効は2014年1月1日となっている。同法案は10月15日に下院で、10月16日に上院で可決されていた。

同法が発効する2014年1月1日からは、輸入される輸送用機器のみならず、国内で製造される輸送用機器についても同一条件でリサイクル税が徴収される。2012年9月1日の同税導入以降(2012年9月18日記事参照)、これまで課税対象の一部例外としてとして規定されていた、a.スクラップの安全な取り扱いを保証する義務を負う機関によって製造される車両〔工業組み立て措置(注)の枠組みにおいてロシア国内で輸送用機器の製造を行っていること、人口50万人以上の都市(対象都市は工業商務省が規定)などに所有者から製造した車の引き取りを行う体制を構築することなど一定の要件あり〕、b.関税同盟加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン)内で製造されたもので、関税同盟加盟国から輸入される車両、c.国際輸送用としてカリーニングラード州で登録するために輸入された車両についても、今後はリサイクル税が徴収されることとなる。

一方、2014年1月1日からの同法発効後も、a.個人によって個人資産として輸入される場合、b.大使館をはじめ外交機関や国際機関などによって輸入される場合、c.30年以上を経過した輸送機器で、商業輸送(乗客および貨物)目的ではない場合については、課税対象外(一部例外)のままとなる。

今回の法改正は、リサイクル税が輸入車に対して課される一方、ロシア国内で製造される自動車や関税同盟を形成するベラルーシやカザフスタンからの輸入車に対しては特定の条件の下で課税が免除されていることについて、同税制が輸入製品より国内製品を優遇し、原産国によって異なる条件を適用することを禁止したWTO協定の基本ルールに違反しているとするEUや日本の主張に基づくかたちで、関連部分を改正する内容となっている。

リサイクル税の制度改正については、2013年7月29〜30日にEUが(2013年8月13日記事参照)、8月13日には日本が、ロシアとWTOの場における協議を行っているほか、EUについては7月29〜30日に行った正式な当事者間協議でも本件の解決に至らなかったことを受け、10月10日に次のステップとしてWTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請していた(2013年10月15日記事参照)

(注)一定の条件(生産台数・個数、現地調達率の達成など)を順守する代わりに、自動車あるいは自動車部品組み立てのために輸入する部品の輸入関税が一定期間減免される制度。

(宮川嵩浩)

(ロシア・EU・日本)

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