EU、ロシアのリサイクル税でWTOにパネル設置を要請

(EU、ロシア)

ブリュッセル事務所

2013年10月15日

EUは10月10日、ロシアが2012年9月に導入したリサイクル税について、WTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請した。7月9日にWTO協定に基づく協議を要請していたが、解決策を見いだせなかったため、次のステップに踏み切った。なお、日本もロシアのリサイクル税に対し、7月24日にWTO協定に基づく協議を要請している。

<EU輸入車への影響を年間100億ユーロと試算>
EUは10月10日、ロシアが輸入車に課しているリサイクル税に関し、WTOにパネルの設置を要請したことを発表した。

ロシアの国内生産車および輸入車に対するリサイクル税は、同国のWTO加盟直後に輸入関税の引き下げを相殺するようなかたちで、2012年9月1日に導入された(2012年9月18日記事参照)。リサイクル税は廃車の際にリサイクル費用の名目で徴収するもので、乗用車の場合、新車で420ユーロから2,700ユーロ、3年以上の中古車では2,600ユーロから1万7,200ユーロ相当額の範囲で課税される。特定の鉱業用トラックの場合では、14万7,700ユーロ相当額と高額なリサイクル税が課せられる。ロシア側の試算によると、同税制により年間で13億ユーロの収入を得られるとしている。

EUはリサイクル税がEUからの輸入車に対して課される一方、ロシア国内で製造される自動車や関税同盟を形成するベラルーシやカザフスタンからの輸入車に対しては特定の条件の下で課税が免除されていると主張。同税制が輸入製品より国内製品を優遇し、原産国によって異なる条件を適用することを禁止したWTO協定の基本ルールに違反していると見なしている。

EUは7月9日、本件に関してWTO協定に基づく協議を要請していたが、7月29〜30日に行った正式な当事者間協議でも解決に至らず(2013年8月13日記事参照)、ロシアが輸入車に対するリサイクル税を導入してから既に1年以上が経過していることから、パネルの設置要請に踏み切った。EUでは、ロシアへの輸出車に対するリサイクル税の影響は年間で100億ユーロに相当すると見積もっている。なお、日本も7月24日、ロシアの輸入車に対するリサイクル税についてWTO協定に基づく協議をロシアに要請している。

WTOの紛争解決機関(DSB)はEUのパネル設置要請について、10月22日の会議で協議する予定。ロシアはDSB会議でパネル設置に反対する権利があるが、仮にEUが11月のDSB会議でも再びパネル設置を要請した場合は、ロシアは要請を阻むことはできない。パネルがいったん正式に立ち上がると、裁定手続きを担当する委員(パネリスト)が選定される。

(田中晋)

(EU・ロシア)

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