好調な経済を背景に投資機会が拡大−タンザニア・ビジネスセミナー−

(タンザニア)

中東アフリカ課

2013年10月02日

外務省の招きで来日したタンザニア産業貿易省のウレディ・ムーサ次官は9月20日、ジェトロと国際協力機構(JICA)が主催したビジネスセミナーで、好調な経済を背景に同国でのビジネス機会が拡大していることを紹介し、日本企業に積極的な投資を呼び掛けた。また、同省で産業開発アドバイザーを務める水野由康氏や東アフリカの産業動向を研究している創価大学の西浦昭雄教授らが講演した。

<鉄道分野を中心に投資を呼び掛け>
ジェトロおよびJICAは9月20日、タンザニア・ビジネスセミナーを東京で開催し、企業関係者ら約150人が参加した。

サロメ・シャジオナ駐日タンザニア大使は冒頭あいさつで、2013年6月に横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)を踏まえ、今後の日本とタンザニアの2国間関係について次のように述べた。「タンザニアは先進国のパートナーとして、日本を最重要国と認識している。日本とタンザニアは長年にわたり良好な関係を築いてきた。そして、今その関係を一歩前進させる時期にきている。すなわち、今までの支援供与国、被援助国の関係から、両国が互いに経済発展に寄与し合うような対等なパートナー関係を築く必要がある。だからこそ、日本企業によるタンザニアへの投資を促す方策が求められている」

続いて、ムーサ次官が投資環境とビジネス機会について説明し、「タンザニアは1986年以降、社会主義政策を緩和させ、経済自由化を推進してきた。それに伴い民間セクターは自由に投資でき、その恩恵も自由に受けることができるようになった」と強調した。投資誘致の優先分野として、農業、縫製業(綿産業)、鉱業、石油・天然ガス、電力、鉄道、インフラ開発、通信を挙げた。

その中でも、特に日本企業からの協力を期待しているのが鉄道の近代化だ。同国では1913年に敷かれた線路が現在でも使用されており、線路や車両をはじめとする鉄道インフラの整備が急務とされている。既に日本政府から線路の設計面で技術協力がなされ、2014年初頭には新たな線路の着工が実現する予定だ。ムーサ次官は「世界最先端の鉄道システムを持つ日本に鉄道分野への投資に力を入れてほしい。それによって他の分野での投資も促すことができる」と呼び掛けた。

セミナー会場の様子

<地場企業との連携にも可能性>
タンザニア産業貿易省で産業開発アドバイザーを務めるJICA専門家の水野由康氏は、経済構造や産業動向を説明した上で、地場企業との連携の可能性について説明した。「タンザニア経済は1980〜90年代の低成長を経て、2000年から7%成長が12年続いている。各産業部門が均等に成長しており、バランス良い経済成長を遂げている」と分析。今後の有望分野としては、大型の事業拡大計画を進めている通信分野のほか、製造業、サービス業、不動産、金融、鉱業、流通などを挙げた。各分野で活躍する地場企業として、バクレサグループ(製粉、食品加工、アイスクリーム)、スマリアグループ(プラスチック、薬品製造、通関業)、MACグループ(銀行、保険、不動産)、モティスンホールディング(製鉄、圧延、鋼材)、モハメドエンタープライズ(貿易、流通、製造業)などを紹介し、こうした企業と連携した事業活動も有効な手段になり得ると強調した。

<BOPビジネスも有望に>
創価大学の西浦昭雄教授は、東アフリカにおける食品加工業の動向を紹介し、「食品加工業は内需拡大による成長産業で、東アフリカ共同体(EAC、注)の形成による地域統合の恩恵も受けられる。南アフリカ共和国の企業を含めて外資の参入が多い分野だ」と述べた。最近の動向を理解する上では、a.原料の現地調達化の動き(調達コストの削減、物品税優遇策、消費者へのアピール)、b.市場の拡大(購買力の増加、中間層の増加、スーパーマーケットの普及)、c.ロジスティクス管理やサプライチェーンマネジメントの進歩(インフラ改善、携帯電話の普及、外資による技術導入)がポイントになると説明した。特に、サプライチェーンにおいては、企業は東アフリカに網の目のように販路を張り巡らせており、こうした流通形態は低所得層を顧客ターゲットとするBOPビジネスに通じる部分も多いのではないかと解説した。

(注)加盟国はケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジの5ヵ国。域内人口は約1億4,000万人。

(高崎早和香、井上真希)

(タンザニア)

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