全ての輸出入貨物に前払い法人所得税を課税

(ミャンマー)

ヤンゴン事務所・アジア大洋州課

2013年10月01日

原則全ての輸出入貨物を対象に、6月14日から新たに「前払い法人所得税」の徴収が始まっている。輸出入業者は輸出入価格の2%を輸出入時に支払う必要がある。

<税率は輸出貨物も輸入貨物も2%>
かつては、輸出代金相当額が外国の輸入者からミャンマーの銀行に振り込まれる際に、商業税8%および法人所得税2%の合計10%で構成される、いわゆる輸出税が課税(天引き)されていた。縫製業などの委託加工(ミャンマーではCMPと呼ぶ)事業者の委託加工賃も輸出税の対象となっていて、10%全部が法人所得税という扱いだった。輸出税は、2011年7月に合計7%(商業税5%および法人所得税2%)に減税され、さらに同年8月には半年間、一部の品目を対象に2%(法人所得税のみ)に減税された。その半年後の2012年2月に同措置は延長され、直後の4月には全ての品目を対象に0%となった。CMPに対する輸出税についても、2011年8月に2%、2012年4月からは0%と同様の措置が取られている。

今回の前払い法人所得税は、輸出貨物に課税される税金としては一度廃止された輸出税が復活したものともいえるが、今回は輸入貨物も同様に対象となっている。前払い法人所得税は、輸出入貨物の課税価格の2%を輸出通関時、または輸入通関時(関税納付時)に納税する必要がある。納税は現地通貨のチャット払いで、ドルの課税価格をその日のレートでチャットに換算した上で課税される。

前払い法人所得税はあくまで法人所得税を前払いしている税金だ。通常、法人所得税は年度末決算後に純利益の25%を納税するので、この一部を前払いしていることになる。差額は年度末に調整し、過払い分については払い戻される。所管は、国税局だ。

なお、輸出税のときに対象となっていたCMPの委託加工賃は、前払い法人所得税の対象外だ。その他、外国投資委員会(MIC)の認可を得た輸入者が輸入する貨物、ODAに関わる無償貨物、個人名で輸入する自動車なども対象外となっている。ミャンマーでは外国企業による物品の輸出入が禁止されている(注)ため、今回の導入については多くの日本企業にとって直接的な影響はない。

<過払い分の払い戻しなど、今後確認を>
一方、ミャンマー地場企業は今回の通達を比較的冷静に受け止めているようだ。これまで地場企業は国に対する納税意識が著しく低く、こうした突発的な追加税金支払いに対しても現場では大きな混乱は起きていない。しかし、日本を含め諸外国からミャンマーに輸出、またはミャンマーから輸入する外国企業は、前払い法人所得税が地場企業に課税されていることは認識しておいた方がよいだろう。ミャンマーでは会社の決算を締めてから、会計事務所による会計監査、税額計算、納税までの間、相当の時間を要するため、最終的な差額調整がどのように行われるのか、過払い分が本当に払い戻されるのか、しばらく状況を見守る必要があるだろう。

(注)外国企業は貿易業者としての営業許可を得られないが、製造業、サービス業として法人を設立し、その製造・サービス提供を目的とした原材料輸入、完成品輸出は外国企業も行える。しかし、外資のCMP事業者による輸出入以外の事例は、現在のところわずかとみられる。

(水谷俊博、小島英太郎)

(ミャンマー)

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