中古機械・設備の輸入に新たな規制を首相が指示−科技省の基準公表が遅れ、混乱続く−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2013年09月25日

グエン・タン・ズン首相は8月9日、国外からの中古機械・設備の輸入を規制するよう、財政省、科学技術省に指示した(首相指示17/CT−TTg号)。この指示は、中古機械・設備の輸入に関して科学技術省が公表する基準を満たす必要があるとしているが、科学技術省は9月20日を過ぎてもその基準を公表していない。このため一部の地方税関で、中古機械・設備の輸入手続きができない事態が発生している。

<主に国営企業に対する中古機械・設備輸入の管理・監督が目的か>
この首相指示は、機械・設備に対する企業の管理・監督を強化することが狙いだと考えられる。同指示は「幾つかの企業(国営経済グループ、総公社を含む)が、老朽化した品質の悪い中古機械・設備を輸入した結果、生産コストの上昇、環境汚染、企業競争力の低下を招いた」と指摘している。そのため、中古機械・設備の輸入が、今後ベトナムの経済活動に影響すると判断して取られた措置と思われる。

同指示は、2012年7月17日付の「2011〜2015年の国営経済グループと総公社をはじめとする国営企業の再構築」に関する政府決定929/QD−TTg号に基づいている。しかし、同指示には国営企業以外に「企業」という表現も使われているため、民間企業や外資企業も対象とされる。

<一部の地方税関で中古機械の輸入通関が滞る>
同指示には施行日が定められていない。しかし、関連省庁は同指示の公布日である8月9日以降、発効しているとの見解だ。一方、同指示では中古機械・設備を輸入する場合、科学技術省が公表する基準を満たさなければならないとしているが、同省はこの基準をいまだ公表していない。このため運用段階で問題が生じている。

税関総局は9月13日付でオフィシャルレター(5363/TCHQ−GSQL号)を科学技術省に送付し、中古機械・設備の輸入基準を公表するよう促している。同書には、同省からの基準が公表されるまでは、「科学技術省が許可した場合のみ、中古機械・設備の輸入通関を行う」との方針を示している。また税関総局は科学技術省に対して、「8月9日以前に(外国で)船積みした貨物は該当するのか否か」を問い合わせており、運用段階で混乱が生じているといえる。

現在、一部の地方税関で中古機械・設備の輸入通関ができないとの相談がジェトロ・ハノイ事務所に寄せられている。9月20日に同事務所が中古機械・設備の輸入基準を担当する科学技術省の職員に尋ねたところ、「現在、財政省(税関総局を所管)と基準に関してどのようにすればよいのか協議している」と答えた。しかし、いつ基準を公表するかについては明言しなかった。

<解決方法が分からないため企業は対応に苦慮>
2012年に中国からの一部の中古機械・設備の輸入に関して規制が出された(2012年9月21日記事参照)が、それ以外で、大きく障害となる規制はなかった(ジェトロ「中古機械の現地輸入規則および留意点:ベトナム向け輸出」参照)。しかし、現在は科学技術省から中古機械・設備輸入に関する基準が公表されるまで、具体的な対策がない状況だ。

このため、当地の日系物流会社は対応に苦慮している。数ヵ月後に中古機械・設備をベトナムに輸入する予定だった当地の日系製造企業も、今回の規制に困惑している。

(佐藤進)

(ベトナム)

ビジネス短信 5242508de30d0