開城工業団地が166日ぶりに再開、南北関係改善に弾み

(韓国、北朝鮮)

中国北アジア課

2013年09月20日

8月14日の韓国と北朝鮮間の合意に基づき、北朝鮮の開城(ケソン)工業団地は9月16日、5ヵ月ぶりに操業再開した。北朝鮮が4月3日に韓国側関係者の同工業団地への立ち入りを一方的に禁止してから166日ぶりのことだ。南北経済協力の象徴的存在である開城工業団地の操業再開により、南北間の他の懸案事項も進展の可能性が出てきた。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<初日は北朝鮮側労働者3万2,000人が出勤>
操業再開をめぐっては、南北共同委員会(2013年8月27日記事参照)での協議が続けられてきた。9月10〜11日に開催された第2回協議で、9月16日から操業・試運転を再開することで双方が合意していた(添付資料参照)。

9月16日は、韓国側から入居企業123社のうち、約90社の企業関係者を中心に739人が開城工業団地入りしたのに加え、北朝鮮側からは3万2,000人の労働者が出勤したと統一部では明らかにしている。初日に韓国入居企業の7割強の企業が工業団地入りし、北朝鮮側の労働者は操業中断前の5万3,000人の6割が出勤したことになる。

5ヵ月余ぶりに操業再開という活路は開けたものの、この間に重要な取引先を失った企業も多く、また生産設備が従来のように動くかも見極めることができていない。入居している韓国企業にとっては、今後いかに顧客の信頼を勝ち得て、中断前の操業水準に戻していくかが最大のカギといえる。

<操業再開に必要なインフラも整備>
9月の南北共同委員会の合意に基づき、操業再開に必要なインフラも整備された。「朝鮮日報」(電子版9月17日)によると、韓国電力公社が同団地内の平和発電所を9月13日から稼働し、最大10万キロワットの電力が供給できるようにしたほか、韓国水資源公社が9月16日から開城工業団地に7,000トン、開城市に1万5,000トンの合計2万2,000トンの水を供給した。また、通信インフラを担当するKT(韓国最大の通信企業、前身は韓国国営の韓国通信)は、9月10日に通信体制を整えた。さらに、同団地内に支店を設置しているウリ銀行も、9月16日から正常業務を開始したという。

操業が再開された9月16日、韓国と北朝鮮は第3回南北共同委員会を開き、8月14日に合意していた外国人を対象とした投資説明会を、10月31日に同団地内で開催することで合意した。これは同団地を外国企業にも開放し、外貨獲得につなげたい北朝鮮と、韓国企業だけでなく外国企業も入居することによって、同団地を国際的水準の工業団地にレベルアップしようとする韓国側の利害が一致したためで、10月31日の説明会にどのような企業が関心を持つか注目される。

<離散家族再会事業は進展、金剛山観光事業は難航か>
朝鮮動乱(1950〜1953年)時に南北に離れ離れになった家族を対象とした離散家族再会事業については、8月23日に板門店で南北赤十字による実務協議が開催され、9月25〜30日に金剛山で実施することで合意に達した。9月初旬には、離散家族の面会所や宿泊するホテルなどの施設の補修も行われ、9月16日には双方約100人の参加者名簿の交換を済ませた。

一方、金剛山観光事業については、統一部が8月27日に、金剛山観光事業の再開に向けた実務協議を10月2日に開催したいと北朝鮮側に提案しているが、9月半ばを過ぎても、北朝鮮側からの回答はない。統一部はその際に、再開するためには韓国人観光客の身辺安全保障と北朝鮮が凍結や没収した韓国側資産の原状回復が重要との立場を表明しており、再開に向けての協議が開催されても難航が予想される。

(根本光幸)

(韓国・北朝鮮)

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