ロシアのリサイクル税で、EUと日本がWTOでの協議を要請

(日本、ロシア、欧州)

欧州ロシアCIS課

2013年08月13日

ロシアが2012年に導入したリサイクル税をめぐり、2013年7月にEUと日本が制度の改善を求めてWTOでの協議を要請した。これを受けてロシアとEUは7月末、第1回の協議を行った。

<内外無差別の原則に反するとEU、日本が非難>
EUは7月9日、ロシアに対し、WTOの場でロシアのリサイクル税(2012年9月18日記事参照)に関する協議を求めた。EUは「輸入車に対して課されるリサイクル税は、ロシア国内で生産される自動車に対しては、一定の条件をクリアする必要はあるが、基本的に課税されない状態だ」として、内外無差別の原則に反すると非難した。

また、ベラルーシとカザフスタンからの輸入車に対してもリサイクル税が課されないことから、全てのWTO加盟国からの輸入を公平に扱うという最恵国待遇の原則に反し、EU加盟国の輸出を不利にしている、との懸念を示した。さらに、製造後3年を経過した「中古車」とそれ以外の車両でリサイクル税の税率(係数)に大きな差があるため、リサイクル税は輸入中古車と同等の価格帯の車両が多い国内産業保護を目的としている、とも指摘した。

EUはこれらを根拠に、リサイクル税は1994年GATT協定およびTRIM協定(貿易関連投資措置に関する協定)に違反するとして、措置の是正を協議することを求めている。

7月24日には日本も、ロシアに対し協議の場を設けることを要請した。日本は「ロシアは、ロシア国内で廃車処理ができる自動車メーカーはリサイクル税を免除するとしている。他方、そのようなメーカーはロシア国内に法人格を持ち、かつ特定の条件の下での生産を行っているところに限られる」とし、輸入車が差別的な待遇にあると非難した。

また、a.組み立て部品の現地調達を求める「工業組み立て」を念頭に、自動車部品の輸入にも非関税障壁があること、b.国内メーカーへの実質的なリサイクル税の免除措置などによってロシア国内の自動車産業の保護と国内投資への誘導を図っている、とも指摘した。

<ロシア側も解決に前向き姿勢>
ロシア側もこれらの動きに対応し、既に7月29〜30日にブリュッセルで、EUとの第1回の協議を行った。同協議には米国、日本、中国、ウクライナ、トルコもオブザーバー参加した。同協議でロシア側の代表を務めた工業商務省のラフモノフ次官は「協議の内容は建設的なものだった。EUとロシアはこの問題をうまく解決することが重要だと理解している」として、EUとの間で双方が受け入れ可能な解決策を見いだせるとの期待を示した。

ロシア政府は、リサイクル税を国内メーカーにも適用するための法案を既に連邦下院に提出している。当初は7月1日からの施行を目指していたが、連邦下院での審議が完了する前に春季議会が閉会となってしまったため、9月に開かれる秋季議会であらためて審議される見通しだ。

(梅津哲也)

(ロシア・欧州・日本)

ビジネス短信 52049e8258de0