新たな輸出拠点としての魅力をアピール−トルコ(イズミール地方)セミナー開催−
海外投資課
2013年08月02日
トルコ・イズミール地方への投資誘致を担うイズミール開発公社関係者が来日し、ジェトロや国連工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所と共催で6月28日、東京でトルコ(イズミール地方)セミナーを開催した。
<日系企業のイズミール進出は数社>
セミナーには、日本企業などから116人が参加した。トルコ側からイズミール開発公社(IZKA)による投資環境について、またジェトロからトルコのビジネス環境について説明が行われた。
トルコは人口7,563万人で、欧州・ロシアCIS地域諸国(欧州)と比較するとロシア、ドイツに次ぐ3位、中東諸国と比較するとエジプトに次ぐ2位の規模となる。また名目GDPは欧州と比較すると9位、中東ではサウジアラビアを上回る1位であり、人口における年齢中位数(人口を2等分する境界点の年齢)は30.1歳と若年人口の層が厚く、今後の国内市場の成長も期待できる。
地理的には欧州、中東、北アフリカといった巨大市場の中央に位置しており、これら地域の国々へのアクセスが容易な状況にある。人口の約4分の1はイスタンブールを中心としたマルマラ地域に集中しており、在トルコ日系企業数は製造業を主体に約120社。そのほとんどは同地域に進出し、イズミールへ進出している日系企業は数社にとどまる。しかしエーゲ海に面し、フリーゾーンもあるイズミールは、中東をはじめとする近隣市場への輸出拠点として、外国企業からの投資も集めている。
<地理、人材、交通インフラに優位性>
イズミールはアナトリア西部、エーゲ海沿岸に位置し、人口は400万人のイスタンブール、アンカラに次ぐ第3の規模。9つの大学があり、毎年約1万5,000人の卒業生を送り出していることから、高度人材の供給において重要な役割を果たしている。
年間900万人が利用するアドナン・メンデレス空港には国際便も就航し、取扱量で国内2位のイズミール・アルサンカク港をはじめとする4つの港湾がある。このような地理面、人材面、交通インフラ面での優位点をベースに、イズミールには2つのフリーゾーンが設置され、海外市場への輸出拠点としての投資を集めている。
トルコのフリーゾーンでは、輸出加工の製造業に対し、製品輸出による利益部分の法人税控除、関税・付加価値税の免税などの面で優遇が与えられる。またフリーゾーンでの利益は無制限にトルコ国内外に送金が可能だ。イズミールの2つのフリーゾーンの1つ、「エーゲフリーゾーン」は1990年に設置された。面積は220万平方メートル、開発と運営は米国系デベロッパーのESBASによって行われており、現在225社が入居、うち外国企業は72社となっている。産業別では自動車、機械、衣料品、電気機器、航空関連と多岐にわたる。これらの企業による雇用は約2万人に達し、年間取引額は50億ドルに上る。土地の賃貸料は1平方メートル当たり年間3ドル67セントとなっており、開発直後からの価格が据え置かれているのは、大きな魅力ともいえる。
<ワンストップ機能が充実するIZKA>
IZKAは、開発公社として2006年に設立された。進出を検討する外国企業に対し、フリーゾーン内を含む工場用事業用地の物件紹介や法人設立手続きの相談業務、各種許認可の申請・取得支援などのサービスを無料で提供し、「ワンストップショップ」としてその役割を果たしている。イズミール県内への外国企業の進出企業数も設立当時は849社だったが、2012年には延べ1,772社となり、2013年は1,800社以上に達することが見込まれている。
イズミール県へ進出した外国企業の国別内訳をみると、ドイツを筆頭に、オランダ、イタリア、英国と欧州各国が続く。一方で日系企業はわずか数社にとどまり、エーゲフリーゾーンにも進出はまだない。しかし、今回のセミナーの参加者からは、「イズミールの投資誘致に対する積極性を感じた」「イズミールの基礎的な情報が理解できた」などの評価があった。イズミールの投資環境や地理的な優位性に利点を感じ、イズミールを欧州から中東に至る広範な市場を視野に置いた新たな輸出拠点として見直す企業が出てくることを期待したい。
(伊藤玲門)
(トルコ)
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