「病院輸出」事業で先行するインフォピア

(韓国)

ソウル事務所

2013年08月01日

血液診断バイオセンサー企業のINFOPIA(インフォピア)は2012年、ベトナムとイエメンの両政府と病院建設と医療サービスのノウハウ輸出(以下、「病院輸出」)で仮契約を結び医療業界に反響を巻き起こした。また、同社は遠隔診療用の端末機を独自開発するなど遠隔診断サービス分野において今後の活躍が期待されている。ジェトロは、同社の経営企画チームのソン・ヒゴン部長に6月20日、病院輸出事業と遠隔医療サービス事業について聞いた。

<ベトナム、イエメンと仮契約>
インフォピアがベトナムとイエメンの両政府と締結した「パッケージ型病院輸出」の仮契約の内容は、病院の設計、建設をはじめとして、医療機器および医療情報システムの供給、医療スタッフの教育・管理、コンサルティングサポートなど病院運営を包括的に行う事業となっており、関連産業の輸出や雇用の拡大が期待できる。なお、同社は病院輸出事業に加え、まだ多くの企業が参入していない遠隔医療サービス分野の事業も手掛けるなど、グローバル医療サービス産業での躍進が今後期待される注目の企業だ。

<政府の後押しで病院輸出事業に踏み切る>
問:事業の概要は。

答:1996年の設立後、血液診断バイオセンサーの開発、生産および販売を行っており、社員300人のうち、70人が研究開発(R&D)に携わっている。売上高の約93%は120ヵ国の海外からのものだ。また、病院輸出事業と遠隔医療サービス事業などの新事業を加え、グローバルヘルスケア企業に変貌している。

問:病院輸出事業について。

答:当社が中心となって建設会社、設計会社、IT会社、大学病院などとコンソーシアムを組み、事業を推進した。2012年にベトナムとイエメンの両政府と仮契約を締結しており、本契約締結は準備中だ。それぞれ事業規模は1億ドルで、病床規模はベトナムが500床、イエメンが400床となる。このプロジェクトにおける建設費用は対外経済協力基金(EDCF)やODAなどの開発ファンドが充てられる。

また、過去に韓国企業が外国政府発注による病院事業に部分的に参加した事例はあるが、今回のように韓国企業が全てを引き受ける総合パッケージ型の病院輸出事業は初めてとなる。

問:病院輸出のきっかけは。

答:当社が海外ネットワークを利用し、諸外国の病院需要を調べていたところ、知識経済部(現在の産業通商資源部)が国の新成長事業として病院輸出を掲げ、それに伴い、韓国政府の支援を受けることが可能となった。政府が積極的にコンサルティングの役割を担ってくれるなど、現在もあらゆる面で政府の支援を受けている。

問:イエメンとベトナムを選んだ理由は。

答:両国とも、国からの要請を受けたのが始まりだ。東南アジアや中東地域では一般庶民の間で韓流ドラマや音楽の人気は絶大で、韓国のイメージが非常に良いため、韓国商品は信頼できるという認識が広がったことがベースにあると考える。また、医療ツーリズムの目的で韓国を訪問した多くの東南アジアや中東地域の人が医療サービスに満足して帰って行ったことも良い影響があったと思う。

なお、現在は東南アジアや中東地域が進出の主なターゲットとなっているが、長期的には中国やアフリカでもこれらの事業を進めていくつもりだ。

<遠隔医療サービスも積極的に展開>
問:遠隔医療サービス事業の市場は。

答:遠隔医療サービス事業とは、通信機器を使うことで、病院に行かなくても健康管理のサービスを受けることを可能にさせる事業だ。諸外国をみると、遠隔医療サービス事業について関連法がまだ整備されていないところが大半で、このため多くの企業が同事業の参入をためらっている。

当社は、市場の需要を当社が創出するという考え方に基づき、遠隔診療の端末機を独自開発した。今まで開発した多くの診断機器とこの端末機との相乗効果を狙い、事業を進めている。ある企業が遠隔医療の端末機を開発するとしても、以前から診断機器の開発企業である当社のように製品のラインアップを充実させることは難しい。

一方、2013年4月にタイのチェンマイにおける保健所の近代化事業として、当社の端末機が採用されることになった。今回のタイへの輸出をきっかけとし、まだライバル企業が多くない遠隔医療サービス分野で、先行する当社のブランド価値を高めておきたい。

〔柳忠鉉(ユ・チュンヒョン)〕

(韓国)

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