掃除機の省エネ規則が2014年9月から導入−日本企業に商機も−

(EU、ポーランド)

ワルシャワ事務所

2013年07月30日

EUでは製品別の省エネ基準の策定が進められており、掃除機については2014年9月から基準が導入される。企業にとっては負担が増すが、高い省エネ技術を持つ日本企業にとっては商機ともなる。ポーランドの掃除機のトップメーカー、ゼルメルも日本企業との提携に期待している。

<企業の管理コストが増大>
EUではエコデザイン(EuP/ErP)指令(2009/125/EC)に基づき、製品別の省エネ基準を定める欧州委員会規則を順次制定している。規則が定められれば、CEマークの添付が必須となるなど、企業の管理コストは増大する(2013年3月15日記事参照)。定められた省エネ基準を下回る製品の販売は認められなくなる。また、エネルギーラベルの貼付も義務付けられるので、その場合には、エネルギー効率が消費者に視覚的に伝わり、省エネが購買動向を左右しかねない。高い省エネ技術を持つ日本企業にとっては、ビジネスチャンスともいえる。エネルギーラベルを追い風に、販売を伸ばした日本企業もある(2009年11月16日記事参照)

間もなく発効する欧州委員会規則の1つが、掃除機の省エネ基準を定める規則だ。既に2013年2月のコミトロジー委員会(規則制定のプロセスについては、2009年11月19日記事参照)で規則案が採択され、7月13日の官報に公示(PDF)された。併せて、掃除機のエネルギーラベルに関する欧州委員会規則も公示(PDF)されている。

規則によると、掃除機の省エネ基準は2014年9月1日から段階的に導入される(表参照)。

掃除機の省エネ基準

また2014年9月1日から、図のようなエネルギーラベルの貼付も義務付けられる。ラベルは、エネルギー消費量、ダスト再排出率、ダストピックアップ率(注)などによりA〜Gにランク付けされるが、2017年9月1日からは高性能な製品をより細かく分類できるよう、A+++〜Dにランク付けされる。

掃除機のエネルギーラベル

<ゼルメルは日本企業との提携に期待>
ジェトロがポーランドの家電メーカー、ゼルメルのサプライチェーンディレクター、パベウ・マルコフスキ氏にインタビューをしたところ(6月25日)、掃除機の省エネ基準が定められることを受け、高い技術を持つ日本企業との提携に期待している、と述べた。同社は小型家電を中心に、ポーランド国内だけでなく、ロシアやウクライナなどで販売を伸ばしている家電メーカー(2011年8月19日記事参照)。2013年3月にはボッシュ&シーメンス・ハウスゲレーテ(BSH)グループが買収したが、ゼルメルの中・東欧でのブランド力を見込み、引き続き同社ブランドでの販売を継続することになっている。ゼルメルは日本企業との取引実績もあり、掃除機でもOEM(相手先ブランドによる生産)またはODM(相手先ブランドによる設計・生産)の委託など提携を検討したいという。

製品別の省エネ規制ではこのほか、コンピュータおよびコンピュータサーバーに関する規制も2013年6月27日の官報で公示(PDF)されている。EUでは製品別の省エネ規制強化が着々と進められており、策定の議論の段階から注視していく必要がある。

(注)ダスト再排出率は、掃除機から再排出されるダストの割合。ダストピックアップ率は、カーペットあるいはフローリングでダストを吸引する割合。測定・計算方法については欧州委員会規則666/2013を参照。

(牧野直史)

(EU・ポーランド)

ビジネス短信 51f5d5790f618