植物由来食品の日本からの輸入が可能に

(ベトナム)

ホーチミン事務所

2013年07月16日

これまで日本から輸入できなかった植物由来食品(果物・野菜など)が、制度上輸入できるようになった。大きな前進であり、今後の日本からの植物由来品の輸入に期待がかかる。ただし、価格の問題のほか、複雑な輸入手続きが残っていることも事実だ。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<暫定登録で当面は2013年末まで有効>
ベトナムにおいては2011年以降、食品安全法や農業農村開発省通達13号(13/2011/TT−BNNPTNT)に基づく食品安全検査のため、植物由来食品(野菜・果物など)は指定された輸出国からの輸入でない限り、輸入が許可されないことになっていた。そのため、輸出国として未登録の国からは植物由来食品を輸入できず、これまで日本も未登録国の1つだった(注1、2)。実際に、植物由来品を輸入しようとして、税関で止められる事例もあった。

ところが、2013年5月28日に日本の農業当局が指定輸出国としてベトナムの農業農村開発省に対して登録を行ったため、今後、日本からの植物由来食品の輸入が可能となる(まだ暫定登録のため、当面は2013年末まで有効)。今回、日本から輸入できることになった植物由来食品の範囲は、添付資料の表のとおり。HSコードでは07〜12類の品目が多く含まれている。なお、これらに含まれない植物由来食品(例えば17〜21類など)はそもそも規制の対象ではなく、輸入可能だ。

実際に輸入をする場合、同通達で規定される手続きは以下のとおり。

輸入者は、貨物の到着24時間以上前に、輸入地の植物検疫支局に対して、食品安全検査の登録を行うことになる。登録後、貨物が到着した後、書類チェック(1営業日内)、場合によってはサンプル検査が行われることがあり、その後に、食品安全証明書が発給される。この証明書をもって、税関で輸入通関を行うことになる(注3)。

<価格や複雑な輸入手続きが課題>
ただし、価格面で課題が残る。日本産の野菜・果物など植物由来食品は、ベトナムに輸入して売るとなると価格の問題が生じる。季節限定の贈答品ならともかく、日常的に高価な果物などを買える富裕層はまだ少ない。消費者や中間業者に、価格の差・味の差を理解してもらう必要もある。

また、輸入時の複雑な規制・手続きがほかにも存在する。最も懸念される輸入規制は、生鮮の植物由来品(主に生鮮果物、木材、草など)の輸入時に病害虫防止のために適用される有害動植物危険度解析(PRA:Pest Risk Analysis)だ。農業農村開発省政令02号(48/2007/QD−BNN)・通達39号(39/2012/TT−BNNPTNT)に基づき、これら品目をベトナムに初めて輸入する時、あるいは新たな原産地から輸入する際は、輸入地の植物検疫支局に申請し、PRAと呼ばれるサンプル検査を受けた上で、植物防疫輸入許可証(Phytosanitary Import Permit、1年間有効)を得て、その上で輸入することになる。PRAにかかる所要時間が長く規定されており、品目によって所要時間数年という規定もあるため、今後輸入に当たっての障害となる可能性がある。

また、生鮮食品の場合は規定上、当局の費用負担で放射線検査のための全量検査も存在する。2011年3月の東日本大震災以降、ベトナムでは日本からの生鮮食品・加工食品の輸入時、放射線検査が実施されていた(2012年7月11日記事参照)。日本政府の働き掛けにより、加工食品については、2012年7月に放射線検査が廃止されているが、生鮮食品については依然として放射線検査が以下のように残っている。100%検査の対象でも実際に全量検査になっているかなどの運用実態は不透明なものの、本検査は輸入に時間がかかる要因となるため注意が必要だ。

○生鮮食品に対する放射線検査
管轄:農業農村開発省農林水産品質管理局
a.福島、茨城、栃木の3県は100%検査
b.その他の県は20%のサンプル検査(全ロットの20%をサンプル検査)
ともに1ロット当たり1サンプル採取する。最低数量は1サンプル当たり1キログラム。

これらさまざまな複雑な規制・手続きがあるにしても、今回、制度上で植物由来食品が輸入可能になったことは、大きな意味があるといえる。今後の植物由来品の日本からの輸入に期待がかかる。

(注1)この規制の例外(輸入できる場合)として、個人使用目的の旅客手荷物としての輸入、積み替え貨物、保税倉庫で保管される貨物が規定されている。
(注2)現在の登録国一覧は、ウェブサイトのとおり。
(注3)各手続きの様式は同通達(13/2011/TT−BNNPTNT)にあり。

(近江健司)

(ベトナム)

ビジネス短信 51de530946118