スイスとのFTAに署名−対欧経済関係の発展に期待感−

(中国、スイス)

北京事務所

2013年07月12日

商務部の高虎城部長とスイスのシュナイダー=アマン経済相は7月6日、中国・スイス自由貿易協定(FTA)に署名した。高部長は、同協定は中国とその他欧州諸国との経済貿易協力も密接にすると述べ、欧州諸国との経済関係発展に向け、スイスの果たす役割に期待感を示した。

<欧州諸国との初のFTA>
中国とスイスのFTA協議は2011年1月に始まり、その後2年半で9回を数え、2013年5月13日に終了した。5月24日にはFTA交渉終了に関する覚書に署名し、早期発効に向け国内の批准手続きを開始していた(2013年6月3日記事参照)

高部長は7月6日の記者会見の冒頭、スイスとのFTA締結の意義や、欧州との経済貿易関係の発展について次のように述べた。

中国・スイスFTAは、中国と欧州諸国が署名した初のFTAであり、中国政府が継続して対外開放を拡大する決心と信念を十分に表し、スイスを含む欧州諸国との経済貿易関係をさらに発展させるという心からの希望を示すものだ。世界経済の低迷が続き、貿易保護主義の台頭がみられる状況において、本協定への署名は両国が共に貿易保護主義に反対し、自由貿易の発展促進への決心と信念を表すものでもある。中国政府は本協定締結を機に、FTA戦略の実施を加速し、より開放的な姿勢で国際的経済協力に参画し、中国・スイス、中国・欧州の相互利益となるウィン・ウィンの発展を推進する。

<スイスとのFTAに3つの特徴>
次に高部長は同協定の特徴として以下の3点を挙げた。

第1に、ゼロ関税比率が高いことだ。スイスは中国の99.7%の輸出に対し、直ちにゼロ関税を実施し、中国側はスイスの84.2%の輸出に最終的にゼロ関税を実施する。

第2に、両国の産業協力に対してプラットホームを提供することだ。例えば中国側は、スイス側の先進的な時計の検査測定技術の導入を拡大し、中国の時計産業の発展レベルを引き上げる。両国はさらに漢方薬協力対話を展開し、漢方薬の「走出去」(中国企業の海外進出)を推進する。これは両国の産業連携にプラスとなり、実務面で協力を展開し、産業競争力を引き上げ、共同発展を実現するものである。

第3に、協定が多くの新しい規則に及び、それらについて共通認識を得たことだ。政府調達、環境、労働者と就業の問題に関する協力、知的財産権、競争など、中国がこれまでのFTAの協議で直面することの少なかった規則に対し、たとえ国際基準がなくても、これを避けることなく「求同存異」(相違点は残し共通点を求める)の原則に照らし、多くの共通認識に達することができた。

<対欧関係でスイスの役割に期待>
高部長は、両国の産業構造にはそれぞれ優位性があり、FTAによる協力強化の基盤があると指摘した。また、産業チェーンを構成する各分野の場所が異なり、補完性が強いとした。

さらに「スイスは欧州の中心に位置し、欧州自由貿易連合(EFTA)の『領頭羊』(群れでリーダーとなるヒツジ)であり、またEUとともに欧州経済圏を形成しており、欧州市場全体に対する強い影響力がある。中国・スイスFTAへの署名は、両国間の経済貿易関係を大いにレベルアップさせるのみならず、中国とその他の欧州諸国の経済貿易協力をも密接にする」と述べ、欧州諸国との経済関係の発展におけるスイスの役割への期待感をにじませた。

「証券日報」(7月8日)も「中国・スイスFTAで始動する中国・欧州の経済貿易『破氷』(氷を砕く)の旅」と報じ、太陽光パネルやワインの問題など「きな臭い」欧州との貿易関係に、同FTAが「温かさを注ぎ込む」ものと期待している。

そのほか、スイス製の腕時計に対する中国の消費者の関心の高さを報じる新聞もある。時計は関税ゼロとはならないものの、段階的引き下げの対象で、初年度に18%、以後毎年約5%下げられ、10年で60%の引き下げになるという。

(箱崎大)

(中国・スイス)

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