中・東欧の洪水、現時点で日系企業に被害なし−物流網への影響を懸念−

(ルーマニア)

ブカレスト事務所

2013年06月13日

ルーマニアほぼ全域に広がる大雨は6月15日ごろまで続き、ドナウ川の水流が増加する見込み。今回の洪水による企業への影響は今のところ報告されていない。しかし、首都ブカレストと港湾都市コンスタンツァ間の高速道路・鉄道が通る県で、4月に別の洪水で損壊した堤防の復旧が終わっておらず、今回の増水によってこの地域が浸水し、物流網に支障が生じることが懸念されている。

<集中豪雨でドナウ川の水流量高まる>
ルーマニア水源管理庁は6月12日、広範囲にわたる集中豪雨は向こう数日間、ルーマニア西部を中心に続き、特に山間部では河川の水が堤防を越える可能性があると発表した。

ドナウ川流域カラシュ・セベリン県バジアシュにおける6月10日時点の水流量は、秒速8,500立方メートルで、例年の秒速6,400立方メートルを大幅に上回っている。水源管理庁は、6月16日には1万400立方メートルに達すると予測している(プロテベ局6月11日)。

首都ブカレストでは大きな被害は出ていないが、一部の地方都市では毎日のように洪水注意報が出ており、床上浸水や道路冠水など河川の氾濫による被害が多数報告されている。例えば、ルーマニア中部のシビウ県ブラジェルでは、1平方メートル当たりの降水量が1時間50リットルの豪雨となり、29家屋、23ヘクタールの農地・牧草地、4つの橋が冠水した(アジェルプレス6月6日)。

バルガ水源・森林漁業担当相は6月4日、必要に応じて堤防を強化するよう各県へ要求し、最低20万ユーロの予算を確保すると発表した(通信社メディアファクス6月4日)。

<高速道路・鉄道が冠水の恐れも>
ブカレスト〜コンスタンツァ間の高速道路および鉄道が通るヤロミッツァ県フェテシュティでは、2013年4月の洪水で破壊されたままになっている堤防(注)の補強作業が進められている。同県関係者は「堤防が流されれば、3万ヘクタールの耕作地、高速道路・鉄道(いずれもブカレスト〜コンスタンツァ間)が冠水する」とみている(レナステレア報道サイト6月11日)。

ジェトロが6月12日までにヒアリングしたところによると、在ルーマニア日系製造業への被害は出ていないようだ。しかし、中・東欧にある顧客への被害が大きくなれば、製品を納める在ルーマニア日系製造業の生産活動に影響を及ぼす可能性があると懸念している企業もあった。また、日系以外企業への被害も報道されていない(6月12日時点)。

<水管理情報システムの導入を急ぐ>
洪水対策のため、ルーマニア水源管理局は水管理情報システム(Watman)を導入する計画を立てている。投資総額は6,300万ユーロで、うち5,400万ユーロはEUの構造基金から資金調達する。水害の影響を最も受けやすい11流域が対象とされており、完了時期は不明だが、同案件が実現すれば同流域の洪水リスクが多少引き下げられるとしている(アジェルプレス6月12日)。

(注)2013年4月、長雨のためドナウ川が増水し、河川沿いの県を中心に各地で大規模な洪水被害が出た。

(上田恵子)

(ルーマニア)

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