中・韓企業の躍進が目立つ中、日系企業も進出努力−第46回アルジェ国際見本市開催−

(アルジェリア)

パリ事務所

2013年06月14日

5月30日〜6月4日、首都アルジェで「第46回アルジェ国際見本市」が開催された。近年、中国や韓国企業の進出が相次いでおり、今回も両国企業の大規模な出展が目立った。参入の難しい市場といわれるアルジェリアだが、中・韓両国の勢いに押されながらも、ビジネスチャンスをつかもうとしている日本企業もみられた。

<中国パビリオンには100社以上が出展>
「経済の革新」をテーマにした今回のアルジェ国際見本市には、30ヵ国から536の企業が出展した(ナショナルパビリオン数は25)。業種も建設・産業機械、自動車、電化製品、一般消費財(美容品、化粧品、繊維製品など)、食料品、金融や保険サービスなどと多彩だった。近年、アルジェリアで開かれるモーターショーや環境見本市などの専門見本市が増えたためか、アルジェ国際見本市はここ数年、海外パビリオン数、出展者数、来場者数が縮小の傾向にあったが、主催者発表によると、来場者数は約20万人(うちビジネス関係者5万人)を記録したという。

欧州のナショナルパビリオン数は8つと依然存在感は高いものの、今回の見本市で特に目立ったのが中国と韓国だ。中国パビリオンには産業機械と一般消費財などを中心に100社余りが出展し、外国からの出展企業数の5分の1以上を占めた。また韓国企業は、ナショナルパビリオンはないものの、建設機械の現代重工業や1つのホールを独占したサムスン電子(携帯電話、テレビ、冷蔵庫)などが多くの来場者でにぎわっていた。

アルジェ国際見本市のサムスン電子のブース

<ビジネス環境は整備の途上に>
アルジェリアのビジネス環境は整備の途上にあり、参入の難しい市場だといえる。治安の面では、2013年1月にアルジェリア南東部の天然ガス関連施設で起きた人質事件をはじめ、特に周辺国との国境付近におけるテロの脅威に対する不安が残っている。公共施設の付近などにおいても、テロに備え警察が警戒態勢を敷いている。

また、周辺国と違い、フリーゾーンが整備されていないことも不利な条件の1つだ。加えて、2009年の投資法改正における外国投資比率の制限(資本の少なくとも51%以上がパートナーのアルジェリア企業の資本でなければならない)は外国投資の大きな障壁になっている。その他、頻繁に行われる規則や法制度の変更、母国への利益送金の制限なども問題点として指摘される。最近では、国営企業、政府関係者を巻き込んだ汚職事件が報道され、行政手続きがさらに遅くなっているとも指摘されている。

<GDP急増しショッピングモールも>
しかし、石油・天然ガス収入が豊富なアルジェリアでは近年、1人当たりGDPが急増し、2011年には約5,300ドルに達した。その上、「アラブの春」の影響で、政府は社会の安定を保つため、公務員の賃金引き上げや補助金の増加などを講じたことで、国民の収入がかなり増えたとされる。2010年以前にはなかったショッピングモールが数ヵ所オープンし、アルジェリア人の顧客でにぎわっている。

こうした厳しいビジネス環境下、韓国のサムスン電子はアルジェリア一の民間コングロマリット・セビタル(CEVITAL)と組み、代理店契約にとどまらず、傘下のサムハホームアプライアンス(SAMHA Home Appliance)に自社ブランドの白物家電やテレビの組み立てを委託した。また、中・韓に押されまいとアルジェリア市場を攻める日本企業もある。例えば、日立は現地代理店レイラン(Raylan)に自社ブランドの冷蔵庫の組み立てを委託しており、アルジェ国際見本市でもそれぞれの製品が展示されていた。

また、工作機械のアマダグループのフランス現地法人でアルジェリアを管轄している担当者は「欧州の経済低迷の中、多くのアルジェリア系フランス人はアルジェリアでビジネスを起こし、新たな顧客を増やしている。成長はアルジェリアなどの新興国にある。見本市に出展した意味があり、大変満足している」と、輸出市場としての可能性を語った。

(ピエリック・グルニエ)

(アルジェリア)

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