外貨兌換券を7月1日から廃止
ヤンゴン事務所
2013年05月15日
政府は、米ドルと等価の外貨兌換(だかん)券(Foreign Exchange Certificate:FEC)を7月1日から廃止すると、3月21日に発表した。その後、国営銀行などで行われているFECの換金などの作業で大きな混乱はない。1993年の導入以来、国内だけで通用する外貨兌換券として広く使われてきたFECが、20年の歴史に幕を下ろすことになった。
<これまで外貨所有は制限されFECが代替>
2012年8月10日に外国為替管理法が公布されるまで、ミャンマー人は原則、外貨を持つことを禁止され、FECの所持のみ認められてきた(注1)。また、外国人が外国から送金された資金を米ドルで引き出すことも制限され、原則FECでしか口座から下ろすことができなかった(注2)。かつてはミャンマーに入国する外国旅行客でさえ、例外なく米ドルからFECに強制両替させられた時代があったことを考えると、大きな変化といえるだろう。
<4月1日から6月末までFECの交換には4通り>
3月22日付の国営紙「ザ・ミラー」によると、4月1日から6月30日までの3ヵ月に以下のいずれかの方法でFECを交換するよう、政府は通達をしている。
(1)FECから米ドル現金への換金
(2)FECの価値分を米ドル口座に入金
(3)FECから通貨のチャットへの換金
(4)FECからチャットに換金後、チャット口座に入金
ちなみに、5月6日にジェトロが国営のミャンマー外国貿易銀行(MFTB)で1万FECを米ドルに換金したところ、以下の米ドル紙幣を入手した。
○100ドル札:50枚
○50ドル札:50枚
○20ドル札:60枚
○10ドル札:70枚
○5ドル札:100枚
○1ドル札:100枚
<1回の換金で上限は1万FEC>
1回の換金は上限1万FECに設定されている。また、ミャンマーでは新札に近い米ドル札でないと使用できないケースが多いが、銀行で支給される米ドル札の中にはしわや汚れが目立つ紙幣も多数混ざっている。
また、米ドルへの換金は、前述のMFTBおよびミャンマー投資商業銀行(MICB)といった国営銀行のほかにも、外貨ディーラーライセンスを持つ民間銀行でもできる。ただし、民間銀行ではFECの最高紙幣額である20FECは原則20米ドルでの同額換金になるので、1万FECを持って行っても、MFTBやMICBといった国営銀行のように高額紙幣である100米ドルを含めて換金してもらえない。
こうしたことから、手元にあるFECを米ドル現金に換金しないで、米ドル口座やチャット口座への振替、またはチャットへの換金を行う企業が多いようだ。チャットへの換金については、5月6日現在、米ドル現金と同じレート(1ドル=888チャット)で交換に応じている。
なお、FECの換金などの作業が4月に始まった当初は、国営銀行などの窓口は大混雑していたが、今では大きな混乱はない。
<7月1日以降の換金には理由書などを提出>
政府は6月30日までに手元のFECを先の4通りのいずれかの方法で交換するよう通達しているが、仮に6月30日を過ぎてしまった場合は、中央銀行でのみ2014年3月まで交換が可能となる。ただし、その場合は(1)なぜ6月30日までに交換が終わらなかったのかの理由書、(2)会社概要あるいは個人の経歴書、の提出が求められるようだ。
(注1)2012年8月公布の外国為替管理法で、ミャンマー人であっても海外から帰国後の一定期間のみ、一定額の外貨の所持が認められるようになった。「一定期間」と「一定額」の定義は定かではないが、中央銀行から、それぞれ「3ヵ月以内の期間」「1万米ドルを上限」と、当時内々に民間銀行に通達が行われたもようだ。
(注2)出発が1週間以内の海外行きの航空チケットを所持している場合のみ、1万米ドルを上限に特別に米ドル紙幣を引き出すことが可能だった。
(水谷俊博)
(ミャンマー)
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