冷延鋼板などにアンチダンピング税発動−自動車関連産業に影響の恐れ−

(インドネシア)

ジャカルタ事務所

2013年04月26日

政府は3月19日、日本、中国、韓国、ベトナム、台湾の5ヵ国・地域を原産地とする冷延コイル・鋼板(CRC/S)に対してアンチダンピング(AD)措置を決定した。当該措置はAD税を原産地・生産者(鉄鋼メーカー)ごとに最小5.9%〜最大55.6%に区分して賦課するもので、発動期間は2013年3月19日から3年間。日本産品に対しては最高税率が設定されており、当該輸入品価格の上昇による当地自動車関連業界などへの影響が懸念されている。

<日本産品には最高税率の設定も>
商業省のアンチダンピング委員会(KADI)は2011年6月下旬、インドネシア国営製鉄クラカタウスチールから輸入鉄鋼製品のダンピングによる被害が発生しているという提訴を受けて、AD調査を開始した。

KADIは2012年12月下旬に調査結果をまとめ、日本、中国、韓国、ベトナム、台湾の5ヵ国・地域からの輸入CRC/Sについて、ダンピングの事実と被害の発生があるとして、AD税の賦課を商業省に勧告した。これは、日本鉄鋼メーカーを生産者とするものについてはJFEスチールに27.6%、その他の新日本製鉄(現新日鉄住金)など日本鉄鋼メーカーに68.4%のAD税を賦課するよう勧告するもので、日本以外の外国鉄鋼メーカーも含めた最高税率は74.0%としていた。

政府は当該勧告を受理後、政府内の調整期間を経て、最終的に2013年3月19日付財務大臣規定(2013年第65号)として日本、中国、韓国、ベトナム、台湾の5ヵ国・地域から輸入されるCRC/Sを対象とするAD税賦課を決定した。同規定では、日本鉄鋼メーカーを生産者とするものについては、JFEスチールに18.6%、その他の新日鉄(現新日鉄住金)など日本鉄鋼メーカーに55.6%のAD税を賦課するよう定めた。なお、日本以外の外国鉄鋼メーカーを含めた最高税率は55.6%で、最小税率は台湾企業(Synn Industrial)への5.9%となっている。

<自動車関連産業などの需要家に大きな負担>
当該鉄鋼製品の主要なユーザーである自動車関連産業などでは、インドネシア産CRC/Sは品質の要求水準を満たしておらず、日本材を輸入・使用するしかない状況にあるという。既に通関現場でのAD税の徴税は開始されているようだが、通常の関税への上乗せになるAD税の負担は大きい。

工業省や当地自動車工業会は、当該措置の導入による自動車部品の生産コストや販売価格の上昇、これらによるインドネシア産自動車部品の競争力の低下、部品の輸入増加、さらに当地のおける関連投資や雇用にも影響を及ぼすとの懸念を示している。

これに対して日本政府は、4月20〜21日にインドネシア・スラバヤでAPEC貿易相会合が開催された際に行われた茂木敏充経済産業相とギタ商業相との会談で、懸案事項の改善につき意見交換を行った。また、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)としてもAD調査開始以降、同様の懸念や日本材の除外を求める要望をインドネシア政府に対して伝え続けている。

(鈴木光夫)

(インドネシア)

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