自動車産業強化に向け投資インセンティブを拡大
イスタンブール事務所
2013年04月24日
政府は2012年6月に発表した投資インセンティブ制度の修正を発表した。主として自動車産業に関わるもので、チャーラヤン経済相は「自動車部門は、経済の牽引力の一端を担う一方で、輸入依存の高い分野でもあり、政府はこれを改善させるため同部門への投資インセンティブを拡大させることを決定した」と述べた。
添付ファイル:
資料( B)
<現地調達率を85%に引き上げ>
政府は2月15日、自動車産業への外資誘致奨励を主目的に、投資インセンティブの修正(官報2月15日付28560号、2013/4288)を発表した。自動車産業において、一定の投資額、条件を満たすことで、地域別に6つに分かれているインセンティブを2つにまとめ、これまでより手厚いインセンティブを受けられるようにする。なお、最も手厚いインセンティブを受けられる地域への投資の場合は、そのインセンティブがそのまま適用される。現在56%となっている自動車生産における現地調達率を高め、中間財の輸入依存を引き下げることを目標としている。
トルコの投資インセンティブは、経済発展規模に応じて6地域に分けられており、マルマラ地方を中心に先進地域が地域I、最も遅れている東部、南東部が地域VIとなり、それぞれの発展段階に応じた優遇措置が取られている(2012年7月19日記事、添付資料の地図参照)。
今回の修正では、3億トルコ・リラ(1リラ=約55円)以上の投資額となる一般的な自動車製造、7,500万リラ以上のエンジン生産、2,000万リラ以上のエンジンパーツ、トランスミッション、電子機器の生産投資に対して、地域I〜Vの地域で地域Vと同等の優遇措置が受けられることになる。
トルコの製造業は付加価値の高い部品の輸入依存が高く、自動車部門でも高等な技術が要求される動力、起動系が弱体で、エンジン、電子部品などは大きく輸入に依存するという状況が続いている。政府はこうした構造的問題を解決し、建国100周年となる2023年を目標として、自動車輸出を現在の約250億ドルから750億ドルまで拡大させることを掲げている。またチャーラヤン経済相は、自動車生産における現地調達率を現在の56%から85%まで高め、中間財の輸入依存を引き下げることを目指していると述べた。
<期待される新しい乗用車ブランド>
政府は2023年を目標に「純国産ブランドの乗用車生産」も掲げている(自動車生産企業は添付資料の表のとおり)。現在の国内産業の状況から極めて困難な達成目標ではあるが、エルドアン首相はこれを強力に推進するとしている。またチャーラヤン経済相は今回のインセンティブに関して、特にドイツのフォルクスワーゲンの誘致に力を入れていることを明らかにした。
一方で、チュクロバ財閥傘下の国産商用車(バス、トラックなど)、軍用車製造のBMCは、経営が破綻にひんしていることを明らかにし、再建のためにカタールの企業に株式の45%を売却することで交渉していると発表した。BMCはトルコの自動車生産企業として初めて欧州に輸出した企業で、現在でも生産の約2割を輸出している。現代自動車との生産契約不履行も報道されており、国産ブランド目標に水を差すことになったと評されている。
(中島敏博)
(トルコ)
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