EU向け輸出比率が低下、韓国は輸出入とも大幅増−2012年の貿易動向(2)−

(英国)

ロンドン事務所

2013年04月16日

2012年の英国の輸出を国・地域別にみると、輸出のほぼ半分がEU域内向け(構成比50.6%)だったが、欧州債務危機の影響もあり前年比5.2%減だった。他方、EU域外向け(49.4%)は6.7%増と好調だった。輸入は、EU域内(50.8%)が1.7%増、EU域外(49.2%)が2.1%増だった。対日輸出(1.5%)は4.2%増、対日輸入(2.0%)は4.1%減だった。連載の後編。

<韓国への輸出にFTAの関税引き下げ効果>
輸出は、欧州債務危機の影響を受け、EU域内向けの割合が2011年の53.5%から2.9ポイント低下した(表1参照)。EU向けはほぼ全ての国で減少し、ユーロ圏(構成比45.0%)が4.6%減、非ユーロ圏(5.5%)が10.3%減だった。域内で最大の輸出相手国ドイツ向け(11.2%)が横ばい(0.0%)で、オランダ向け(8.1%)はドイツを除いて唯一のプラスとなり5.7%増、フランス向け(7.4%)は5.2%減だった。

ドイツ向けは、石油・石油製品ならびに医薬品が2桁を超える伸びをみせたが、道路走行車両(以下、自動車)や原動機など多くの品目で減少した。フランス向けは、最大の品目の石油・石油製品が3.7%増となったものの、その他輸送機器、自動車、医薬品などほとんどの品目でマイナスだった。一方、オランダ向けは、46.7%を占める石油・石油製品が17.6%増と好調だったほか、7.1%を占める医薬品が30.0%増と大幅に伸びた。

EU域外では、国別でも最大の輸出相手国である米国向け(構成比13.6%)は、医薬品が減少する一方で、原動機、自動車などの増加で3.4%増となった。中国向け(3.3%)は、8.4%を占める金属鉱およびくずが16.2%減だったが、33.6%を占める自動車が52.3%増と急伸したほか、医薬品も2桁の伸びをみせ、全体で12.8%増となった。ロシア向け(1.9%)は、38.1%を占める自動車が20.3%増加するなどしたため、全体で15.4%増となった。インド向け(1.5%)は、非金属鉱物製品、非鉄金属、金属鉱およびくずを中心に減少し、全体で15.8%減だった。

また、韓国向け(構成比1.5%)は、44.3%を占める石油・石油製品が5.8倍と急増した。原動機(4.8%)も2.4倍となり、全体で81.7%増と顕著な伸びをみせた。2011年7月に発効したEU韓国自由貿易協定(FTA)による関税引き下げ効果が要因と考えられる。

サブサハラアフリカ向け(構成比3.1%)は、7.5%増だった。歴史的に関係の深い南アフリカ共和国(1.2%)が3.9%増、ナイジェリア(0.5%)が4.5%増、ガーナ(0.2%)が21.2%増、ケニア(0.1%)8.4%増と、いずれも好調だった。

表1英国の主要国・地域別輸出

<輸入はEU域内外ともに増加、韓国から自動車5割増し>
輸入は、EU27域内(構成比50.8%)が1.7%増で、うちユーロ圏(42.3%)が1.5%増、非ユーロ圏(7.8%)が4.3%増だった(表2参照)。EU域内最大の輸入相手国のドイツ(12.8%)は、6.4%を占める医薬品が88.7%と急増し、全体で4.8%増加した。オランダ(7.6%)は、11.0%を占める通信機器、録音・音声再生装置が55.9%増で、全体でも8.5%増だった。一方、フランス(5.7%)は、12.6%を占める自動車が3.8%減となるなど、全体で0.2%減少した。

EU域外では、最大の輸入相手国である米国(構成比7.8%)は、3.8%増だった。医薬品が減少する一方で、原動機、その他輸送機器などが増加した。また、4.2%を占める石油・石油関連製品が2.2倍と急増した。米国でシェールガスの採掘と利用が増え、米国内のエネルギー需給が緩和された結果、石油・石油関連製品が輸出に振り向けられたとものとみられる。

中国(構成比7.4%)は、その他の雑製品、事務用機器・自動データ処理機械が増加した半面、衣類、通信機器、録音・音声再生装置などが減少し、全体で0.4%減だった。ロシア(2.1%)は、61.1%を占める石油・石油製品が24.6%増、13.0%を占める石炭が15.6%増と鉱物性燃料が牽引し、全体で15.7%増となった。インド(1.5%)は、16.6%を占める衣料品が9.7%減となったものの、石油・石油関連製品、原動機の2桁増により、全体で2.1%増加した。

2011年7月にFTAが発効した韓国(構成比0.8%)は、23.6%増と大きく伸びた。20.3%を占める自動車が53.5%増となったほか、9.9%を占める非鉄金属が3倍、4.8%を占める原動機が2.9倍と、いずれも急増した。

サブサハラアフリカ(構成比2.9%)も、14.7%増と増加した。ナイジェリア(1.0%)が76.9%増、南アフリカ共和国(0.8%)が9.1%増、ボツワナ(0.4%)が25.0%減、アンゴラ(0.2%)が2.5倍だった。

表2英国の主要国・地域別輸入

<対日貿易には円高の影響が顕著、輸入で韓国製品と競合か>
2012年の日本との貿易は、対日輸出が前年比4.2%増の45億7,900万ポンド(1ポンド=約152円)、対日輸入が4.1%減の81億6,200万ポンド。対日貿易収支は35億8,300万ポンドの赤字となり、赤字幅は前年の41億1,400万ポンドから縮小した。

主な対日輸出品目をみると、原動機(構成比18.1%)が31.9%増、医薬品(15.9%)が5.7%増、自動車(11.7%)が27.8%増、非鉄金属(5.5%)が38.8%減、電気機器・同部品(4.9%)が50.7%増だった(表3参照)。原動機の中心はエンジンで、円高などの理由により、自動車と同様に日系メーカーの英国工場から日本向けに輸出されたものとみられる。

表3英国の対日主要品目別輸出(通関ベース)

日本からの主要輸入品目では、67.5%を占める機械類・輸送機器類が7.5%減少した(表4参照)。機械類・輸送機器類の内訳をみると、自動車(26.9%)が7.6%減、原動機(13.5%)が12.4%増、その他の一般工業用機械・同部品など(7.2%)が16.6%減、電気機器・同部品(7.0%)が27.8%減だった。日本からの自動車輸入が減少する一方で、韓国からの機械類・輸送機器類の輸入が19.4%増と急増している。同国からの輸入の20.3%を占める自動車が53.5%増と好調であり、韓国からの輸入の57.1%を機械類・輸送機器類が占めている。円高やEU韓国FTAを背景に、韓国製品との競争が激化している可能性がある。

表4英国の対日主要品目別輸入(通関ベース)

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