対外直接投資が前年比19%増の465億5,500万ユーロと活発−2012年の直接投資動向(2)−
デュッセルドルフ事務所
2013年04月12日
2012年の対外直接投資は465億5,500万ユーロと、前年比19.0%増加した。欧州債務危機の影響によりスペイン、イタリア、アイルランドからの引き揚げ事例が増加している一方、非ユーロ圏の欧州とアジア各国向けの直接投資が好調を維持し、ドイツ企業にとって有望投資先になっている。ドイツの2012年の直接投資動向報告の後編。
<オランダ、英国向けが大幅に増加>
連邦銀行の2月28日発表(PDF、40ページ〜)によると、2012年の対外直接投資は465億5,500万ユーロで、前年の391億1,000万ユーロから19.0%増加した(表参照)。
対外直接投資を国・地域別にみると、ユーロ圏向けは217億9,200万ユーロと前年の22億4,100ユーロに比べ大幅に増加した。オランダへの投資が171億7,000万ユーロと国別で最大となった。オランダ向けの投資案件をみると、建設大手ビルフィンガー・ベルガーが2012年2月29日、海外でのサービス事業の強化を図り、オランダの同業のテボディンを1億4,500万ユーロで買収すると発表した。ルクセンブルクも137億3,700万ユーロで主要投資先となった。オーストリアへの投資は2011年の57億8,400万ユーロから34.0%減少し、38億1,500万ユーロとなった。不動産会社ユニオン・インベストメント・リアル・エステートは10月23日、1億5,000万ユーロでウィーンのオフィスビルを購入したと発表した。
非ユーロ圏の欧州への直接投資も活発化しており、124億8,000万ユーロと前年比3.8倍になった。後押し要因となったのは、2011年の引き揚げ超から99億6,500万ユーロに急増した英国への投資だ。シーメンスは2012年3月20日、4億7,000万ユーロを投資し英国のエネルギー関連会社エクスプロの接続・測定機器事業を買収すると発表した。同事業の買収で海底送電網市場でのポジション強化を図っている。そのほか、不動産のデカは2012年4月18日、2億8,500万ユーロでロンドンのオフィスビルを購入するなど、投資活動が目立った。
ポーランドへの投資も活発で、2011年の29億8,600万ユーロから2012年には35億1,300万ユーロと増加した。同国への主要投資案件として、化学大手BASFは2012年11月6日、9,000万ユーロを投資しブレスラウの近郊シロダ・シロンスカに自動車用触媒工場を設立すると発表した事例が挙げられる。生産開始は2014年第1四半期の予定で、2016年までに投資額は1億5,000万ユーロまで増加する見込み。
ポーランド、ロシアなど東欧地域はドイツ企業にとって有望な投資先であるものの、撤退事例も出始めている。例えば、卸売り大手メトロは2012年11月30日、経営合理化計画「SHAPE2012」を進め、小売り事業の「レアル」のポーランド、ロシア、ウクライナ、ルーマニア事業を11億ユーロでフランスの卸売業者オーシャンへ売却することに合意した。
中南米で14億700万ユーロと最大投資先となったブラジルは、フォルクスワーゲン(VW)、BMWのドイツ自動車メーカーにとって生産拠点として重要になりつつある。VWは2012年10月21日のプレスリリースで、2016年までに、生産能力の拡張や環境配慮型製品の開発に34億ユーロを投資すると発表した。BMWも2012年10月22日、年間3万台の生産能力を持つ新工場を設立する計画を明らかにした。投資は2億ユーロで、生産開始は2014年の予定。
<中国が欧州域外で最大の投資先>
アジアへの直接投資は103億700万ユーロと前年の178億5,500万ユーロから42.2%減となった。中国への投資は2011年の105億8,700万ユーロから68億3,500万ユーロへ減少したものの、中国は2011年に続きドイツ企業にとって欧州域外での最大投資国となった。
投資案件として、自動車部品製造大手へラーは2012年8月16日、中国市場での開発・生産体制を強化するため、福建省アモイ市のアモイ・トーチ・ハイテク産業開発区に子会社を設立したと発表した事例が挙げられる(2012年8月30日記事参照)。そのほか、BASFは2012年8月14日、中国における自動車用塗料のトップサプライヤーとしての地位を強化するため、上海市に新たなベースコート塗料工場を建設すると発表した(2012年9月11日記事参照)。2013年1月31日、新工場の鍬(くわ)入れが行われ、生産開始は2014年初頭の予定。
自動車部品メーカーのコンティネンタルは2012年7月27日、同社のアジア地域でのビジネス拡大に対応するため、シンガポールに研究・開発拠点を開設したと発表した。投資額は2,100万ユーロ。
<日本では再生可能エネルギー分野に脚光>
金額ベースでみると、2012年の日本への投資は5億3,900万ユーロの引き揚げ超過となったものの、特に再生可能エネルギー分野における投資案件が目立った。太陽電池、パネルなど太陽光発電関連部品メーカーのソーラーワールドは2012年12月5日、東京に販売拠点を開いたと発表した。2012年6月に導入された固定価格買い取り制度により、太陽光発電に対する需要が増えつつあることをチャンスとして捉えている。
その他、レーザー機器など工作機械メーカーのトルンプは2012年7月12日、自動車、自動車部品、航空宇宙、一般重工業など各業種の金属加工で使用されるディスクレーザーの日本市場での普及を図り、横浜にディスクレーザー生産拠点を開設した。
(ゼバスティアン・シュミット)
(ドイツ)
対内投資は24億600万ユーロの引き揚げ超過に−2012年の直接投資動向(1)−
ビジネス短信 51664fc0ac1e8




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