メルコスール加盟に伴う関税削減が始まる

(ベネズエラ)

カラカス事務所

2013年04月04日

2013年1月から南米南部共同市場(メルコスール)各国への輸出は一部例外品目を除き無税となっている。これは、2012年7月31日のメルコスール加盟後に各国と関税削減交渉が行われ、ベネズエラの関税削減スケジュールが公示されたのを受けたもの。また、メルコスール決議第31/12号によって、2013年4月5日からは28%の品目の関税率をメルコスールの対外共通関税率に合わせることが約束されている。

<ブラジル、アルゼンチンからの輸入に例外品目を設定>
2012年12月27日付官報第40079号により、ベネズエラおよびメルコスール各国との新関税率および例外品目の関税削減スケジュールが公示された。これにより2013年1月1日から、ベネズエラ産品をブラジル、アルゼンチン、ウルグアイへ輸出する際は、砂糖と自動車を除き無税となっている。ベネズエラとメルコスール各国の間では、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の経済補完協定(ACE)59号により、貿易協定が存在したが、ACE59号で定められていた双方の関税撤廃スケジュールが例外品目を除いて前倒しされたことになる(注)。

一方、メルコスール産品をベネズエラが輸入する場合、ウルグアイからは2013年1月1日から砂糖と自動車を除き無税、ブラジルおよびアルゼンチンからは一部の例外品目について段階的に関税率を削減することになっている。ブラジルからの輸入について、ベネズエラの例外品目は777品目で、これらを除く品目は2014年1月1日から原則無税となる。アルゼンチンは610品目の例外品目を設定、これらを除く品目はやはり2014年1月1日から無税となる予定で、例外品目でも段階的に関税率を削減し、2018年1月1日までに関税を撤廃する見込みだ。ただし自動車と砂糖は重要品目なので、各国間で協議の上、個別に協定を結ぶことになっている。なお、パラグアイは2012年6月のメルコスール会合で加盟資格の一時停止処分を受けており、同国との協定は発効していない。

<原則4年間でメルコスール対外共通関税率に統合>
ベネズエラ投資促進協議会(CONAPRI)のエドワルド・ポルカレリ代表によると、ベネズエラの平均関税率は、メルコスールが定める対外共通関税率よりも高く設定されている。特に農業分野の平均関税率は大きく異なり、これらの品目を段階的に統合していく必要があるという。

2012年12月6日付メルコスール決議第31/12号では、ベネズエラの対外共通関税率統合スケジュールが定められている。それによると、2013年4月5日にベネズエラは28%の品目を対外共通関税率に合わせることになっている。その後、毎年4月5日に対外共通関税率に合わせる品目を増やし、2016年4月5日には一部品目を除き対外共通関税率に原則一致させる予定だ。なお、485品目は例外品目として統合スケジュールからは除き、2017年までに統合させる。ネルソン・メネンテス工業相は、除外される485品目のうち農業分野が341品目、工業分野が128品目、石油科学分野が16品目としているが、具体的な品目は発表されていない。なお、メルコスールは中南米域外でインドと特恵貿易協定が、イスラエルと自由貿易協定(FTA)が発効しているが、ベネズエラがこれらの協定にどのように参加していくかは不明だ。

<脆弱な国内農業、製造業の保護が課題>
ベネズエラは石油産品の輸出に過度に依存した経済構造で、農業、製造業の基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。過度な労働者保護や、政府による接収リスク、朝令暮改の法改正などがあるため、企業が生産性を向上させる環境が整っているとは言い難い。さらに年率20〜30%のインフレで年々通貨ボリバルの価値が下がっている一方、固定相場制でドルとボリバルのレートが固定されているため、相対的にボリバルの価値が過大評価されている。これにより国内で生産するより海外から輸入した方が安くなるため、輸入が増加し、国内産業が縮小するという悪循環が生じている。

ベネズエラ工業連盟はメルコスール加盟により、ブラジル、アルゼンチンをはじめとした加盟国だけでなく、域外の第三国から安価な財・サービスが流入し、国内製造業がさらに疲弊することを懸念している。ブラジル、アルゼンチンからの輸入は一部例外品目についても2018年には関税が撤廃される。それまでに国内産業を育成し、他国の製品と競争できる環境が整っていなければ、農業、製造業など重要分野も大きな打撃を受ける恐れがある。

(注)ブラジル(ACE69号)、アルゼンチン(ACE68号)、ウルグアイ(ACE63号)との協定内容、例外品目および例外品目の関税撤廃スケジュールはALADIのウェブサイトで確認できる。なお、同サイトではACE68号、ACE63号で協定の発効が確認できたが、ブラジルとの協定であるACE69号については確認できていない。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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