ATIGAの「第三国インボイス」が複数の仲介者・国でも適用可能に−JTEPAを除く他のFTAでは否認される可能性も−
バンコク事務所
2013年04月02日
タイ税関は3月6日から、ASEAN自由貿易地域(AFTA)の物品貿易協定(ATIGA)の下、「第三国インボイス」による取引について仲介者・国が複数に上る場合も特恵関税が適用できるよう利用基準を緩和した。これまで取引にATIGA特恵関税を適用するかどうかは、ASEAN加盟各国の裁量に任されていたが、基準の緩和をシンガポールが提起し、2012年11月にタイが同意したことで、ASEAN加盟10ヵ国全てでこの取引が認められることになった。ただし、ATIGAおよび日タイ経済連携協定(JTEPA)を除く他の自由貿易協定(FTA)については、依然として否認される可能性がある。
<タイ税関が利用基準の緩和を通達>
タイ税関は、3月6日付通達No.29/2556(2013年)にて、ATIGAにかかる関税減免を享受できる判定基準と手続きを定めた税関通達No.1/2555(2012年)を一部修正した。これは、2012年11月27〜28日にインドネシアのバンドンで開催された「ATIGA実施のための調整委員会」(CCA)特別会合、およびASEAN原産品の輸入関税減免にかかる財務省通達(2012年1月6日付)に従うかたちで修正されている。
この新通達では、ATIGAにおける「リ・インボイス」とも称される第三国インボイス(Third party invoicing)による取引について、輸出者、仲介者、輸入者の3者以上が関わる取引、例えば仲介者・国が複数に上る取引でも、ATIGAの特恵関税が適用できるよう利用基準を緩和した。ただし、積送基準により、積み替えや荷の状態を保つための一時保管を除き、物品は輸出国から輸入国へ直送される必要がある。
利用基準の緩和は、シンガポールがATIGA原産地規則小委員会に提起していた。これまでこの問題は各国の裁量に委ねられてきた。関係者によると、2012年2月の同小委員会で、3者以上が関わる取引についてタイ、ミャンマー、ベトナムを除く7ヵ国が原則合意していたが、それら3ヵ国のうちミャンマーとベトナムは後日、同取引を認める方向に転じていたという。残るタイは、国内関係機関との間で実施した場合の影響や手続き面での問題について議論・調整を図っていたが、前述した2012年11月のCCAで正式に同意した。
<「第三者」を「3番目まで」と解釈>
これまで仲介者・国が複数に上る場合、タイ税関ではATIGA特恵関税適用を拒否する場面もあった。第三国インボイスは、第三者におけるインボイスを一般に認め、回数は自由と解釈するのが一般的だと考えるが、タイ税関は「3番目の者まで」と解釈していた。例えば、ASEAN域内の取引において、製造者・輸出者はいったん日本本社に販売し、本社が再び第三国側に販売する形式について、企業によってはさらにIPO(国際調達事務所)やマーケティング統括会社などが間に入る場合もあった。こうした取引にATIGA特恵関税を適用するか否かについて、ASEAN加盟各国の間で見解が分かれていた。
新たな通達では、輸入者は仲介者・国が複数に上る際も「最終仲介者・国」のインボイスをタイ税関に提示するとともに、フォームDの第7欄に当該インボイスの発給者名、国名を記入することになる。この通達は即日発効されている。
今回、ATIGAについてはASEAN関係国間での議論を踏まえ複数の仲介者・国が介在する取引でも特恵関税適用対象になったものの、タイが締結している他のFTA・EPAについては、JTEPAを除き、輸入時に税関で否認される可能性がある。タイ税関担当者にジェトロが聞いたところ、「ATIGAを除き同様の通達は出ていない。現在、締結相手国を含め調整を行っているものの、いつ通達が出されるか未定」とのことだった。しかし、同担当者によれば、JTEPAについては「運用上の手続き規則」の規則7で「Third party」でなく「non-Party」という表現をしており、現状でも問題なく適用できる、とした。
(シリンポーン・パックピンペット、助川成也)
(ASEAN・タイ)
ビジネス短信 51594e0da1220