乗用車新車登録台数は前年比4割減、6万台を割り込む−主要国の自動車生産・販売動向(2012年)−

(ギリシャ)

ミラノ事務所

2013年03月29日

乗用車新車登録台数は、リーマン・ショック以降大幅な落ち込みが続き、2012年は1988年以来24年ぶりに6万台を下回った。厳しい経済情勢や維持費の上昇が自動車需要を下押している。地元では経済的理由で自動車に代わる交通手段を探す人も増えていると指摘されており、2013年も引き続き新車登録台数は伸び悩むとみられる。

<新車登録台数は四半世紀前の水準に>
ギリシャ自動車輸入協会(AMVIR)によると、2012年の乗用車の新車登録台数(四輪駆動車を含む)は大幅な減少が続き、前年比40.1%減の5万8,482台にまで落ち込んだ(表1参照)。債務危機前の2008年比では78.1%の大幅な減少で、6万台を割り込んだのは、ギリシャ統計局によると1988年以来の24年ぶりとなった。

表1乗用車新車登録台数の推移

新車登録台数の大幅な減少は、厳しい経済情勢下での継続的な景気後退、失業率の上昇、増税、給与削減による家計可処分所得の減少の影響が大きい。また、先行きへの不安に加え、燃料代高騰、ガソリン税や車両通行税引き上げ、高級車への特別課税導入なども背景にある。新規購入や買い替えを控えるだけでなく、維持費の上昇により自動車の所有を断念する消費者も多く、自動車需要は急激に低下している。

<経済性重視で小型車のシェアが拡大>
乗用車新車登録台数を車種セグメント別にみると、3年連続で小型車(セグメントB)のシェアが拡大し、2012年も前年比6.2ポイント上昇して44.4%を占めた。次いで、中型車(セグメントC)23.4%、超小型車(セグメントA)が15.9%で続き、上位3セグメントで80%以上を占めている。低燃費による燃料費の削減、排気ガス・二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないこと、節税効果などが重視されている。

メーカー・ブランド別でみると、ほぼ全てのメーカーが登録台数を減少させる中で、シトロエンが前年比16.5%増の4,206台となった(表2参照)。特に小型車「C3」の登録が増加し、全体でのシェアも2011年の3.7%から7.2%に拡大した。また、オペルとフォルクスワーゲン(VW)はシェアを拡大している。オペルは2011年の11.7%から2012年は12.1%にシェアを拡大、小型車「コルサ」、中型車「アストラ」が各セグメント別でトップシェアを占めた。VWも、2011年の9.7%から2012年は10.3%へとシェアを伸ばし、「up!」「ポロ」「ゴルフ」などのコンパクト車種が人気を集めている。

日本メーカーでは、これまで根強い需要があり2006年から2011年までの6年間連続でトップシェアだったトヨタが、2012年は3位に順位を下げた。一方、日産は小型クロスオーバー・スポーツ用多目的車(SUV)「キャシュカイ」(日本名「デュアリス」)人気が下支えして6位を維持した。

また、欧州各国でシェアを伸ばしている韓国の現代自動車は、2011年に続きシェアが縮小し、順位も7位から9位に下げ、勢いが落ちている。

表2メーカー・ブランド別乗用車新車登録台数とシェアの推移

<2013年も需要は低迷し、小型車へのシフトが継続か>
2012年9月1日に、1982年から続いた首都アテネ中心部への乗り入れ可能車両ナンバー規制が撤廃され、代わりに低排出ガス車両のみがピーク時間帯に中心部への乗り入れを許可されている。新制度では、2009年9月に導入されたユーロ5基準に準拠した車両だけが中心部への進入を許可されている。また、ユーロ4基準を満たし、かつCO2排出量が走行1キロ当たり140グラム未満の車両とハイブリッド車も中心部への進入を許可されている。

首都アテネがあるアッティカ県の交通管理センターの発表によると、2012年の平均走行時間は2009年に比べ20%減少し、通勤・通学で混雑する時間帯では、2009年に比べ60%もの減少が記録されているという。また、自動車を売却してオートバイを購入、あるいは市内移動手段として徒歩を選択する人が増えている。

2013年も自動車需要の低迷は続くと自動車販売業界は予測している。経済面から低燃費、CO2排出量が少ない小型SUVや小型車へのシフトは継続する見通しだ。

(野嶋生代、三宅悠有)

(ギリシャ)

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