あまり利用されず運用細則もない「Back to Back CO」

(ベトナム)

ハノイ事務所

2013年03月27日

「連続する原産地証明書」の「Back to Back CO」は、中継ぎ貿易港のシンガポールではよく利用されるが、ベトナムではあまり使われていない。また、運用細則もないのが実情だ。

<AJCEPでの日本側とJVEPAで利用できず>
「Back to Back CO」〔参考資料(PDF)〕とは、日本語で「連続する原産地証明書」、また英語では「Movement Certificate」のことを指す。どのような意味なのか、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)フォームDを例に考えたい(図参照)。例えば、インドネシアから輸出された原産品が、一時シンガポールの倉庫に入庫した後に、ベトナムに輸入されるとする。経由国のシンガポールで入庫された貨物が加工されず、インドネシアで取得した原産資格が何ら変更されない場合に、シンガポールの原産地証明書発給機関により「Back to Back CO」が発給される。

「Back to Back CO」の利用例

シンガポールで「Back to Back CO」の発給を受けるためには、インドネシアで当該貨物に対して発給された原産地証明書が必要となる。経由国における「Back to Back CO」の発給に際しては、対象となる産品に対して何ら加工がなされず、元の原産資格を維持していることを何らかのかたちで担保し、かつこれを確認することになる。

現在、ベトナムで発効している経済連携協定/自由貿易協定(EPA/FTA)は、(1)ATIGA、(2)ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)、(3)ASEAN・韓国自由貿易協定(AKFTA)、(4)日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)、(5)日ベトナム経済連携協定(JVEPA)、(6)ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)、(7)ASEAN・インド自由貿易協定(AIFTA)の7つ。この中で「Back to Back CO」が発給されないのは、AJCEPにおける日本側での発給と2国間協定のJVEPAだ。その他に協定に関しては発給されている。しかし、発給される範囲や具体的な運用手続きについては各協定、各国で異なるため確認が必要だ。

<未加工証明書の提示は困難>
中継ぎ貿易として栄えてきたシンガポールでは、「Back to Back CO」は多く発給されている。一方、ベトナムではあまり利用されていない。ハノイ市の発給当局によると、1年に数回くらいという。そのため、具体的な運用上の細則がない。

例えば、輸入通関を終え、輸出加工企業以外の工場に入庫した場合、対象となる産品に対して何ら加工がされていないことを確認しなければならない。そのため、発給当局には未加工証明書の提示が必要となるが、未加工証明書をどこの機関で発給するのかということが法規にない。このため実際には、発給当局のスタッフが入庫している工場へ行き、原産地証明書に記載してある産品、ロット番号、原産地規則を確認して、発給するかどうか判断するという。

なお最近になって、東南アジアで生産した産品をホーチミン市の倉庫に保管して、「Back to Back CO」として他の東南アジアに輸出することを検討している日系企業が出てきている。その背景には、ベトナム南部のサイゴン港やカイメップ・チーバイ港から東南アジアに輸出する場合、他国と比べて運賃が安いということが挙げられる。ただし、中継ぎ貿易港に求められる通関の利便性などをシンガポールと同様に、といっても難しいかもしれない。「Back to Back CO」を利用して東南アジア諸国に輸出をする企業が増加してくれば、実施細則を規定する必要が出てくるだろう。

(佐藤進)

(ベトナム)

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