外国人労働者の年次雇用税が労働者負担に−最低賃金導入による企業負担を軽減−

(マレーシア)

クアラルンプール事務所

2013年02月19日

外国人労働者を雇用する際に課せられる年次雇用税(レビー)が1月30日から、雇用主負担から労働者負担へと再び変更された。2013年1月からの最低賃金制度の導入で人件費上昇に苦しむ企業への負担軽減措置として、財務省が改正を決めた。

<職種や雇用地で異なる税額>
外国人労働者(駐在員は除く)を雇用する場合、レビーが課せられる。レビーは職種や雇用地が半島マレーシアかサバ・サラワク両州かによって異なる。例えば、最も高いレビーが課せられるのは半島マレーシアのサービス業で1,850リンギ(1リンギ=約30.3円)、最も低いのは農業で410リンギとなっている。日系企業による雇用が最も多い製造業、建設業は半島マレーシアが1,250リンギ、サバ・サラワク両州などは1,010リンギとなっている(表参照)。

外国人労働者の年次雇用税(レビー)

レビーは1992年に導入された税で、当初は外国人労働者が全額負担するものだった。外国人労働者が、マレーシア国民を対象に提供される診療所、道路、その他の社会サービスを享受するため、受益者負担の概念から開始されたものだ。導入開始から2009年3月31日までは、企業はレビーを外国人労働者の給与から天引きしていた。例えば、製造業の場合は、毎月の給与から100リンギ程度を天引きしていた。しかし、政府は増加する外国人労働者の削減を目的に、2009年4月1日から雇用主に負担を義務付けたため、企業側にとっては雇用税分の人件費が増加していた(2009年4月20日記事参照)

<レビー導入当時の負担制度が復活>
今回の制度改正の背景には、2013年1月1日から始まった最低賃金制度の影響が大きい。最低賃金はマレーシア人労働者、外国人労働者の両者に適用される(2012年7月24日記事参照)。財務省の情報によると、最低賃金令の施行により、労働者全員の平均月給が600〜700リンギから900リンギへと平均で30〜50%増加。また、外国人労働者を含めた全労働者の残業代などの手当も増加したため、収入全体が平均で1,200〜1,500リンギになったという。

政府はとりわけ中小企業が負担するコスト軽減を考慮するとして、1月30日、1992年当時の外国人労働者負担の制度を復活させると発表。レビーは、再び外国人労働者による全額負担となった。ただし、適用されるのは新規に雇用する場合で、既に雇用している労働者に関しては労働許可証を更新する際に適用される。

財務省は外国人労働者に与える影響として、「外国人労働者が自己負担する雇用税は月額34.16〜154.16リンギであり、最低賃金の導入に伴い給与が1ヵ月当たり300〜500リンギ増額となったことを考えると、外国人労働者による雇用税の自己負担を求める政府の決定は外国人労働者にとって大きな負担となるものではない」との見解をプレスリリースで示した。産業界側は2009年の制度改正時から、レビーは労働者負担にすべきだと強く主張してきた。最低賃金導入に当たって、企業のコスト負担が大きくなっていることを憂慮した政府が、ようやく雇用主側の要望に応えたかたちだ。

(手島恵美)

(マレーシア)

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