外国投資禁止21分野などを明示−新外国投資法の施行細則を公表(1)−

(ミャンマー)

ヤンゴン事務所

2013年02月15日

ミャンマー投資委員会(MIC)は1月31日、外国投資が禁止される21分野、外国企業がミャンマー企業との合弁のみによって認可される42分野、さらに、投資認可に当たって事業の所管省による意見書や連邦政府の承認などが求められる115分野、特定の条件下でのみ参入可能な27分野、そして、環境アセスメント(EIA)が認可の条件となる34分野を記載した通達を発表した。また、国家計画経済開発省(MNPED)も、外国投資の形態、申請・許可手続きなど詳細にわたる通達を同日に発表した。その内容を2回に分けて報告する。前編では、禁止21分野と合弁42分野などについて。

<防衛関連や電気の商業取引などで投資認めず>
2012年11月2日に制定された新外国投資法〔和訳(PDF)〕に基づき、MICは1月31日に通達No.1/2013(以下、MIC通達)を発表した(注)。まず、外国企業には認められない21分野をネガティブリスト方式で記載している。また、同じく1月31日付でMNPEDが発表した通達No.11/2013(以下、MNPED通達)では、ミャンマー国民にのみ認められる「製造業およびサービス業(第7条:製造業は伝統薬の製造など10分野、サービス業は伝統薬を利用した専門病院など9分野)」「耕作農業ならびに短期的および長期的農業(第8条:低資本の耕作農業など2分野)」「畜産業(第9条:低資本の小規模畜産業など2分野)」「海洋漁業(第10条:海水魚の遠洋漁業など2分野)」について、別表で定めている。これらも同じく、外国企業の参入が禁止される分野となる。

○外国企業には投資が認められない21分野
(1)防衛関連の軍需品製造および関連サービスの提供
(2)環境破壊につながるビジネス
(3)化学肥料法、種苗法、その他農業関連法に違反する製造業および農業
(4)海外から輸入した廃棄物を利用したビジネスおよび工場設立
(5)オゾン層の破壊などにつながるような禁止物質の生産およびビジネス
(6)残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約により禁止されている有機物質の製造
(7)海外から中古工場や中古設備を輸入し、環境保護法および細則で禁止され、周辺の環境に影響を及ぼすような危険物質を製造するビジネス
(8)自然林の保護および管理
(9)ヒスイなどの宝石の試掘、探掘、生産
(10)中小規模の鉱物製品の製造
(11)アスベストでできた建築資材の製造および流通販売
(12)電気配電網の管理
(13)電気の商業取引
(14)電気関連の点検サービス
(15)環境や健康汚染につながる化学物質〔MTBE(メチル・ターシャリー・ブチルエーテル)やTEL(四エチル鉛)など〕を輸入、生産、使用するような精製事業
(16)人体、公衆衛生に影響を与えるような汚染物質の生産・排出
(17)川などでの金を含む鉱物資源の採掘
(18)航空交通管制サービス
(19)航海交通管制サービス
(20)印刷業とメディア事業の一体運営
(21)ミャンマー語を含む固有の言語での雑誌などの印刷および出版

<加工食品製造、オフィスビル建設など42分野は合弁のみ可能>
MIC通達では続いて、外国企業がミャンマー企業との合弁によってのみ認められる42分野を以下のとおり記載している。ミャンマー企業が多く携わる加工食品製造は、幅広い分野で合弁のみ可能とされている。また、オフィスビルや住宅用アパートなどの建設、販売なども合弁のみとなっている。これらの分野に関する合弁比率については、MNPED通達第3章第20条に「外資出資比率は80%を超えないこと」と規定されている。ただし当条項は、MICが政府の許可を得た場合に修正できるとも記されており、将来的に比率の変更の可能性はあり得るといえる。

なお、最低資本金額・投資額については、合弁の場合のみならず、禁止・制限分野以外での100%外国投資が可能な場合でも、今回の細則には規定されていない〔外国投資法第10条(iii)項で「外国人が投資する場合、MICは事業の性質に基づき、連邦政府の承認を得て事業分野により最低投資額を定める」とされている〕。

○外国企業がミャンマー企業との合弁によってのみ認められる42分野
(1)ハイブリッド種の製造および販売
(2)固有種の製造および販売
(3)ビスケット、ウエハース、麺、マカロニ、その他麺類など、穀物加工食品の製造および販売
(4)あめ、ココア、チョコレートなどの菓子類の製造および販売
(5)牛乳および乳製品以外の食品の製造、缶詰の製造、および販売
(6)麦芽および麦芽アルコール飲料の製造および販売
(7)蒸留酒、アルコール飲料、清涼飲料などの生産、精製、ボトリングなど
(8)氷の製造および販売
(9)水の製造および販売
(10)綿製の織物用糸の製造および販売
(11)エナメル製品、刃物類、陶器類の製造および販売
(12)プラスチック製品の生産および販売
(13)ゴムおよびプラスチック製造
(14)包装ビジネス
(15)合成皮革以外の皮革原料で作る履物やハンドバッグなどの製造および販売
(16)各種紙製品の製造および販売
(17)カーボン紙、ろう紙、トイレットペーパーなどを含む紙製品、段ボール製品の製造および販売
(18)国内の天然資源を利用した化学製品の製造および販売
(19)可燃性物質・液体・ガス・エアロゾル(アセチレン、ガソリン、プロパン、ヘアスプレー、香料、デオドラント、殺虫剤)の製造および販売
(20)酸化化学品(オキシジェン、ハイドロジェン)および圧縮ガス(アセトン、アルゴン、ハイドロジェン、ニトロジェン、アセチレン)の製造および販売
(21)腐食性化学品(硫酸、硝酸)の製造および販売
(22)気体・液体・固体を含む産業用ガスの製造および販売
(23)薬品の製造および販売
(24)ハイテクを利用したワクチンの製造
(25)産業用鉱物資源の探査および試掘
(26)大規模鉱物開発
(27)ビル建設、橋建設に使用するコンクリート製品および組み立て式鉄骨フレームの製造
(28)橋脚、高速道路、地下鉄網などの輸送インフラ開発
(29)国際水準のゴルフコースおよびレクリエーション施設の開発
(30)住宅用アパート、コンドミニアムの建設、販売および賃貸
(31)オフィスビルの建設および販売
(32)工業団地に隣接した住宅地区でのアパート、コンドミニアムの建設、販売および賃貸
(33)一般大衆向け住宅の建設
(34)ニュータウンの開発
(35)国内線航空サービス
(36)国際線航空サービス
(37)乗客および貨物用水上運送サービス
(38)造船所での船舶の建設および船舶の修理
(39)倉庫・港施設の建設および水上ポートサービス
(40)客車および貨車エンジンの製造
(41)民営の専門病院および伝統医療病院
(42)旅行業

(注)MIC通達、MNPED通達は2月14日現在、ミャンマー語のみでの公表となっている。ここで紹介している内容は、ジェトロがミャンマー語の通達や独自に英訳したものを基に和訳している。また、現地法律事務所などが英訳したものも参考とした。近々、公式に英語版が発表されると思われる。

(水谷俊博、小島英太郎)

(ミャンマー)

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