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皮革や繊維などの原産国表示義務付け規則案の採択を断念−欧州委の委員が意向示す−

(EU)

欧州ロシアCIS課

2013年02月01日

欧州委員会のドゥ・グヒュト委員(通商担当)は1月17日の欧州議会本会議で、皮革や繊維などの輸入品に原産国表示を義務付ける規則案の採択を断念する意向を示した。原産国表示の義務付けは一部加盟国および欧州議会が強く求めていたが、加盟国の同意が得られないことに加え、WTOルールとの整合性でも問題があるため、このような方針に至った。欧州委は春にも正式に結論を出す予定。ただし、欧州議会は法案の再提出を求めている。

<2005年の規則案提示から7年以上経過>
EUでは、一部の食品を除き、原産国表示は任意となっている。皮革、繊維などのEUへの輸入品に対する原産国表示の義務付けをめぐっては、欧州委が2005年12月に規則案を提示していた。加盟国間の意見の対立が深く、議論は停滞していたが、リスボン条約で新たに権限を得た欧州議会が2010年10月になって規則案を採択したことで、法案審議を再開していた(2010年11月2日記事参照)

しかし、加盟国間の意見の対立が一向に解消されなかったことに加え、WTO上級委員会は2012年7月に米国の食肉の原産国表示制度(COOL)が輸入品に不利な影響をもたらすとして、貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)違反を認定していた〔2.1条、WTOの裁定についてはジェトロ世界貿易投資報告(PDF)など参照〕。規則案ではEU、トルコ、欧州経済領域(EEA)参加国以外の原産品に表示を義務付けるとしている。このため、規則案がこのまま採択されれば、輸入品に不利な影響をもたらすとして、同裁定に照らすとWTOルールとの整合性が問題となる可能性もあった。

この問題に詳しいホーガン・ロベルズ法律事務所パートナーのローデス・カトレイン弁護士も「WTO上級委員会の解釈に照らせば、現行の法案はTBT協定第2.1条に違反しているとみられる」と指摘する。同条では強制規格(義務的な規格)により輸入産品に国内産品より不利でない待遇を与えることと規定しているが、WTO上級委員会は、原産地表示の義務付けは強制規格に当たると判断した。加えて、法案は輸入品のみに適用されるから、「輸入品にのみコストおよび行政負担を増やす表示義務を負わせる」ことになり、国内産品より不利でない待遇を与えるという同条の義務に違反すると考えられるためだ。

そこで欧州委は2013年の作業計画(PDF)で、撤回する予定の規則案リストに原産国表示規則案を加えていた。

<欧州議会は規則案再提出を求めるも欧州委は消極的>
これに対して、欧州議会は1月17日の本会議の討論で、ブラジル、中国、米国などEU以外に原産国表示を義務付けていることや、消費者保護の観点から規則案撤回には問題があることを指摘。欧州委に再考を促すとともに、仮に法案を破棄するとしても、早急にWTO整合的な規則案を提出するよう求める決議を採択した。

しかし、ドゥ・グヒュト委員は本会議の討論で、規則案提示から既に7年以上経過してもなお合意が得られる兆しがないことを踏まえ、「現実を直視しなければならない」と指摘。あらためて規則案を撤回する予定であることを表明(PDF)した。

また、同委員は規則案の再提出については、「今のところそのような方針で進める予定はない」と述べ、消極的な意向を示した。

WTO整合的な規則案とするための修正の1つとして、輸入品だけでなく、EU製品にも原産国表示を義務付けることが考えられる。しかし、その場合はEU運営条約上の根拠条文が変わってくること、あらためて影響評価を実施する必要があり、担当部局も異なるとみられることなどから、現行規則案の微調整では対応できない。そのため、近い将来の規則案再提出は現実的ではないと判断したと考えられる。同委員は、今後引き続き検討する予定としながらも、規則案再提出を検討するとしても同委員所管の貿易総局ではなく、産業総局が適切と示唆した。

欧州委は、規則案の撤回をまだ正式に決定したわけではないものの、繊維などの輸入品に対し、「EUが近い将来原産国表示の義務付けを導入する見込みは薄い」(カトレイン氏)。2010年の欧州議会の規則案採択は、圧倒的多数で可決されており、今後も欧州議会は原産国表示の義務付けを強く求めていくものとみられるが、EU閣僚理事会での支持を欠いており、EUレベルで繊維などに原産国表示が義務付けられる可能性は当面なさそうだ。

(牧野直史)

(EU)

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