新車販売台数は5.7%減も過去最高の2011年に次ぐ水準−主要国の自動車生産・販売動向(2012年)−

(オーストリア)

ウィーン事務所

2013年01月24日

2012年の新車(乗用車)登録台数は前年比5.7%減となったものの、過去最高だった2011年に次ぐ高い水準を維持した。新車登録された翌日に登録が抹消される「短期登録車」が統計上の登録台数を下支えしている。市場が縮小する中で、排気量の大きい自動車は堅調な伸びを示した。

<2013年の新車販売も厳しい予測>
オーストリア統計局が発表(1月9日)した2012年の自動車(乗用車、産業用車両)新車登録台数によると、自動車全体の77%を占める乗用車の新車登録台数は前年比5.7%減の33万6,010台だった(表1参照)。前年比で減少したが、2011年の新車登録台数は過去最高で、2012年の実績はそれに次ぐ史上2番目の記録となる。この発表を受け、オーストリア自動車工業会のエルンスト会長は「2011年の実績を上回ることができなかったが、昨今の経済情勢にあって2012年の結果は注目に値する。2013年については、2012年11月以降新車登録が大きく低迷しているため、その流れで自動車業界にとって厳しい年となり、新車登録台数は31万〜32万台となることが予想される」とコメントしている。

表1主な車種別新車登録台数(2012年)

<排気量1750cc超の自動車は微増>
エンジン種別では、最大のシェアを占めるディーゼル車が前年比2.6%減と、自動車全体の減少幅の5.7%減に比べると軽微な減少にとどまった(シェア56.4%)(表2参照)。一方、ガソリン車は9.9%の大幅減となった(42.7%)。また、ガソリンと電気のハイブリッド車は37.4%増を記録している(0.5%)。こうしたことから、消費者は燃料費を意識して自動車を選定する傾向が強いということができる。また、排気量別にみると、1750cc以下は8.9%減だった一方、1750ccを上回る自動車は前年比1.0%増となっており、排気量が大きい自動車が堅調な伸びを示した。

表2エンジン種別新車(乗用車のみ)登録台数(2012年)

ブランド別では、フォルクスワーゲン(VW)が他を大きく引き離し最大シェア(18.3%)を占め、これにシュコダ、フォード、アウディ、現代が続く(表3参照)。上位ブランドの中ではシュコダ、アウディ、現代が新車登録台数を伸ばす中、オペルは新車登録台数が前年比25.7%減、シェアは1.5ポイント減となり2位から6位に下がった。

表3主要ブランド別新車登録台数(2012年)

<日産が日本メーカーのトップに>
日本メーカーの新車登録台数は3万8,331台で、前年と同じく全体の11.4%のシェアだった。2008年以降は新車登録台数、シェアともに減少を続けており、2011年にオーストリア全体で新車登録台数が伸びた際にも日本車は伸び悩んだ(図参照)。2012年に日本メーカーで最も新車登録台数が多かったのは日産で、2008年以降上位にあったトヨタ、マツダを初めて上回った。日産の新車登録台数(8,607台)の約51%を占めるのは「キャシュカイ」(日本名「デュアリス」)で、同車はモデル別ランキングの17位に入っており、上位20位にランクインしている唯一の日本車だ。オーストリア日産のシャリオ広報部長によると、キャシュカイは2007年からオーストリア市場で最も売れているモデルで、その人気の理由は「スポーツ用多目的車(SUV)、コンパクトカー、バンの要素を兼ね備え、環境に優しいエンジンを搭載していることだ」という。

日本メーカーの新車登録台数とシェアの推移

<「短期登録車」が増える>
2012年は、登録の翌日にその登録を抹消された新車が2万5,821台(前年比7.7%増)となった。この「短期登録」を除くと、2012年の新車登録台数は前年比7.1%減となる。報道によると、統計上の新車登録台数を増やすために、短期登録を行うメーカーや販売会社があるという。本件について、オーストリア自動車工業会のエルンスト会長は「短期登録をマーケティング手法と見なし、その自動車がその後、中古車として国内で販売される分には基本的に問題はないが、登録抹消後すぐに他国に輸出され、国内を一度も走ることがないとなると話は違う」と発言している。

(鷲澤純)

(オーストリア)

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