欧州29ヵ国の新車登録台数、7.8%減の1,253万台−主要国の自動車生産・販売動向(2012年)−

(EU)

ブリュッセル事務所

2013年01月23日

2012年の欧州29ヵ国の新車登録台数は、前年比7.8%減の1,252万7,912台となった。欧州最大市場のドイツは2.9%減と、前年の大幅増から後退したが、2位の英国が5.3%増と、欧州5大市場国の中で唯一プラス成長になった。他方、ギリシャ、ポルトガルなど欧州債務危機下で財政支援を受けている国で4割近く減少したほか、フランス、イタリア、スペインでも10%以上の需要後退がみられた。メーカー別では、韓国勢が2012年も好調な売れ行きを示した。現代・起亜グループの市場シェアはフィアット、BMWに迫っており、成長著しい。

<英国は5大市場国で唯一のプラスに>
欧州自動車工業会(ACEA)の発表(1月16日)によると、2012年の欧州29ヵ国(注)の新車登録台数は前年比7.8%減の1,252万7,912台となった。またEU加盟国のうち、旧加盟国15ヵ国では8.5%減、新規加盟国11ヵ国では2.8%減となった(表1参照)。

表1欧州29ヵ国の新車登録台数

国別にみると、最大市場のドイツは前年比2.9%減の308万2,504台となった。旧加盟国15ヵ国の需要後退と比較すれば善戦した方だが、登録台数の減少を免れることはできなかった。続く英国は5.3%増の204万4,609台となり、欧州5大市場国(ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン)の中で唯一のプラスとなった。旧加盟国15ヵ国の中では、英国以外に、ルクセンブルク(1.0%増)、デンマーク(0.4%増)の2ヵ国がわずかながら増加したにとどまった。フランス(13.9%減)、イタリア(19.9%減)、スペイン(13.4%減)、オランダ(9.6%減)、ベルギー(14.9%減)といった上位3位から7位の国々は軒並み10%以上か、10%近く減少した。欧州債務危機に伴う緊縮財政の影響もあり、南欧諸国を中心に需要の大幅な後退が確認された格好だ。とりわけ、ギリシャ(40.1%減)、ポルトガル(37.9%減)といった財政支援を受けている国々での著しい需要の低下が確認された。

一方、新規加盟国11ヵ国では、ハンガリーで前年比17.6%増と著しい回復をみせたほか、エストニアでも12.5%増と2桁台の増加となった。他方、ルーマニア(18.7%減)、スロベニア(16.7%減)で10%台後半の自動車需要の後退が確認された。また、2012年6月に支援を要請したキプロスでも、24.6%減の大幅な減少がみられた。なお、中・東欧の最大市場ポーランド(1.4%減)ではやや減少したものの、前年レベルを何とか維持した。

<2012年も10%成長を維持した韓国勢>
メーカー別にみると、最大シェアを誇るフォルクスワーゲン(VW)グループ(前年比1.1%減)およびBMWグループ(1.4%減)、ダイムラー(2.2%減)のドイツ勢はやや減少したものの、前年レベルを辛うじて維持した(表2参照)。VWは主に中・東欧市場でのVWブランドの浸透と、アウディの貢献により、西欧市場での減少を補ったことによる。アウディは特に英国で、前年比7.2%増の販売台数を記録した。

PSAプジョー・シトロエン・グループ(12.9%減)やルノー・グループ(18.9%減)などのフランス勢や、フィアット・グループ(15.8%減)といったイタリア勢は、欧州債務危機の影響もあってか、2桁台の大幅な減少を記録した。このほか、ゼネラルモーターズ(GM)グループ(13.6%減)も同様に大きく後退した。

こうして各メーカーの販売が減少する中、現代・起亜グループが前年比11.6%増となり、2012年も販売台数を大きく伸ばしている。現代、起亜それぞれでみた伸び率は9.4%と14.6%だった。双方を合わせると市場シェアは6.1%となり、ともに6.4%のフィアット・グループやBMWグループに接近している。特に、フィアット・グループは前年の7.0%の市場シェアから後退しているだけに、韓国車に対する警戒が強まっているものと推測される。

また、15%に近い伸びを示した起亜はスポーツ用多目的車(SUV)の「スポーテージ」とコンパクトカーの「シード」の販売が好調で、2012年1月にスロバキア・ジリナ工場で3交代制を導入、生産能力を拡大し、この需要増に対応してきた。加えて、2013年第1四半期中に、新型「プロシード」の生産を開始する計画だという。

<一部の日本勢に大幅な減少傾向>
日本勢をみると、トヨタ・グループが前年比2.5%減にとどまったものの、市場シェアは前年の4.1%から4.3%に上昇した。中でも「ヤリス」と「ヤリス・ハイブリッド」が顧客に受けているという。他方、2011年に小型SUVの「キャシュカイ」(日本名「デュアリス」)とコンパクトカー「ジューク」の貢献により13.7%増を記録した日産は、2012年は5.8%減と後退した。しかし、日産の主要投資市場である英国とロシアでは10%以上の伸びがみられたほか、「キャシュカイ」と「ジューク」の需要は順調で、販売台数全体に大きく貢献しているという。そのほか、ホンダは6.2%減となり、マツダ(9.7%減)やスズキ(13.4%減)などは大幅に減少した。

2012年は欧州債務危機に伴う緊縮財政の影響もあり、欧州の自動車市場全体が大きく後退したが、各メーカーの販売状況には大きな差異がみられた。欧州各国での構造改革はしばらく続くことが予想され、市場の急激な回復は見込めない。しかし、2012年に始まった自動車二酸化炭素(CO2)排出規制の影響もあり、自動車の小型・軽量化が今後さらに進むことは間違いない。その意味では、CO2排出量が低い売れ筋の小型SUVやコンパクトカーのモデルを打ち出したメーカーが有利な展開は2013年も続くだろう。

表2欧州29ヵ国のメーカー別新車登録台数

(注)欧州29ヵ国は、EU27ヵ国のうち、マルタを除いた26ヵ国と、欧州自由貿易連合(EFTA)4ヵ国のうち、リヒテンシュタインを除いた3ヵ国の合計。

(田中晋)

(欧州・EU)

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