労務派遣の規範化を狙う−労働契約法を初改正−

(中国)

北京事務所

2013年01月11日

労働契約法の一部改正が決まった。問題が散見された労務派遣に関して、直接雇用を補完するものであるという位置付けや、労務派遣が可能な職位の定義をより明確にした。労務派遣会社に対する監督も強化された。同改正は2013年7月1日から施行される。

<派遣雇用を補完的な位置付けに限定>
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会が2012年12月28日に開催され、労働契約法の一部改正が決まった。関連法規の整備などの手続きを経て、2013年7月1日から施行される。

全人代常務委員会法制工作委員会の●(門がまえに敢)珂副主任によると、2008年に施行されてから初めてとなる労働契約法の改正は、労務派遣を労働者雇用の補助的な位置付けに戻し、派遣労働者を合理的な範囲に収めるものだとした(人民網2012年12月28日)。

全人代常務委員会は2008年と2011年に労働契約法の執行状況の調査を行い、労務派遣をめぐる問題が多いことを認識していた。具体的には派遣会社の数が多く、経営が規範に即したものになっておらず、派遣先で派遣労働者を長期に大量雇用しており、労務派遣が雇用の中心になっているケースも見受けられたという。さらに、派遣労働者に対して、派遣先の労働者との「同工同酬(同一労働、同一賃金)」が実施できていないケースがあったとしている。

そこで、派遣労働者の権益を保護すること、派遣会社のさらなる規範化を図ることなどを目的として今回の改正に至った。

<派遣雇用が可能な職位の記述を追加>
主な改正点としては、労働者の直接雇用が中国の企業における雇用の基本であり、労務派遣による雇用は補完的なもので、臨時的、補助的または代替的な業務職位に対してのみ実施するものであると、これまで以上に労務派遣の雇用を限定する内容となった(第66条)。

そして、これまでは曖昧だった臨時的、補助的、代替的な業務職位を説明する記述が追加された。臨時的が「6ヵ月を超えない」、補助的が「主要業務にサービスを提供する主要でない業務」、代替的が「派遣先の労働者が学習のための一時休職、休暇などにより労働を提供できない一定期間に代替するもの」とされた(同条)。

さらに、派遣先の企業は派遣労働者の人数を厳格にコントロールし、一定の比率を超えてはならないとした(同)。具体的な比率は国務院の労働行政部門が規定するとしており、今後の動向が注目される。

<派遣会社の監督を強化>
派遣会社に対する監督を強化する改正も盛り込まれた。派遣会社については、登録資本が50万元(1元=約14円)を下回ってはならないとだけ規定されていたが、改正では、a.登録資本は200万元を下回ってはならない、b.展開する業務に相応な固定された経営場所と施設を有すること、c.法律、行政法規に合致する労務派遣管理制度を有すること、などを満たす必要があるとした(第57条)。

また、許可を得ずにみだりに労務派遣業務をした場合、労働行政部門は違法行為の停止を命じ、違法所得を没収し、かつ違法所得の2倍以上5倍以下の罰金を科す、違法所得がない場合は5万元以下の罰金を科すことができるとした(第92条)。

さらに、派遣会社や派遣先が労働契約法の労務派遣規定に違反した場合は、労働行政部門が是正を命じ、期限内に是正を行わなかった場合、労働者1人につき5,000元以上1万元以下を基準として罰金を科し、派遣会社の労務派遣業務経営許可証を没収するなどとした(同条)。これまでは事案が重大である場合には、労働者1人につき1,000元以上5,000元以下の基準により罰金を科すなどとしていたが、罰金額が大きくなった。

監督の強化により政府は派遣会社のさらなる規範化を狙うが、広州市総工会(労働組合)の陳偉光主席は「一部の企業は『上有政策、下有対策(上に政策あれば、下に対策あり)』で対応してくる恐れがある。関連部門は業務アウトソーシングなど新しいかたちでの労務派遣の方法について研究と対策を練り、根本的な労務派遣問題の解決に力を注ぐべきだ」と呼び掛けている(人民網2012年12月28日)。

(宗金建志)

(中国)

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