国債購入で永住権取得要件を緩和−政府は外国人の投資活性化を期待−

(ハンガリー)

ブダペスト事務所

2013年01月11日

外国人の永住許可取得に関する新法が2012年12月11日に議会で可決され、大統領の承認を経て12月28日に施行された。この新法により、25万ユーロ相当以上の5年物国債を購入することで、ハンガリーの永住許可要件が大幅に緩和される。政府はこの新法によって、外国人投資家の滞在許可取得に伴う手続きの煩雑さをなくし、投資活動をより活発にする効果を期待しているようだ。

<25万ユーロ以上の5年物国債購入が条件>
ハンガリーで永住許可を取得する場合、いくつかの条件がある。3年以上のハンガリーでの居住実績、許可申請者の健康状態が良好で社会保障への過度の依存がないこと、国家の安全を脅かさないことなどで、それらが認められれば永住が許可されてきた。今回の新法によって、ハンガリー滞在に許可が必要な外国人、もしくは当該外国人が所有する企業が、25万ユーロ以上の5年物ハンガリー国債を購入・保有することにより、居住実績がなくても6ヵ月間の一時滞在許可証が発行された後に、永住許可への切り替えができるようになる。

現在、労働者に対して発給される一時滞在許可は最大で2年の有効期限しかない(別途取得が必要な労働許可の有効期限と同期間しか一時滞在許可は発給されない)。このため、有効期限を迎えるたびに更新を求められるが、永住許可を取得すれば、煩雑な滞在許可更新作業を行わなくて済む。ただし、新法に基づき国債購入・保有によって永住許可を得た場合でも、その国債を手放し、25万ユーロ分に満たなくなった場合には永住許可が剥奪される。

一定金額以上の国債購入・保有や投資を行うことによる永住許可申請権限付与または許可要件緩和は、英国などで実施されている。ハンガリーの永住許可を得ることで、一時滞在許可更新手続きをその都度行う必要がなくなるほか、国政選挙権・被選挙権を除いた多くの権利(地方参政権など)が、ハンガリー人と同様に与えられる。25万ユーロの投資で永住許可を与えるのは、他国で求められる投資額に比べて安過ぎる、との報道もある。

<償還期限を迎える多額の外債>
新法の提案者の1人である与党議員アンタル・ローガン氏は現地紙の取材に対し、「ハンガリー・中国友好議員グループのリーダーをしており、中国人投資家から滞在許可取得の際の煩わしさについて、たびたび不満を聞かされていた。それに応えるために新法を提案した」と話している。欧州債務危機の影響で国内経済が低迷する中、政府は少しでも外国企業や投資家にとっての投資環境を良くする必要に迫られている。

ローガン氏は「今回の措置は、外貨建て債務のうち2013年に期限を迎えるIMFへの51億ユーロの償還の資金繰りにも役立つ」とも話した。この背景には長引くIMFとの金融支援交渉がある。政府はIMFからスタンドバイ融資を受けるための交渉に臨んでいるが、交渉は一時停止しており、再開のめどは立っていない。こうした中、政府はIMF以外からの資金調達に期待しており、2013年にも新たな外貨建て国債の発行による借り換えを予定している。

(バラジ・ラウラ、三代憲)

(ハンガリー)

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