2012年11月のユーロ圏失業率、11.8%と過去最高
ブリュッセル事務所
2013年01月11日
EU加盟27ヵ国の2012年11月の失業率(季節調整済み)は、前月と同率の10.7%だった。ユーロ圏17ヵ国では前月から0.1ポイント悪化の11.8%となり、1999年のユーロ導入以降の最高値をまた更新した。国別ではギリシャの失業率の悪化ペースが加速しており、9月時点でスペインの失業率を上回った。
<EU27ヵ国は10月と同じ10.7%>
EU統計局(ユーロスタット)の2013年1月8日発表(PDF)によると、2012年11月のEU加盟27ヵ国の失業率は前月と同率の10.7%となった(表参照)。失業率が緩やかに悪化する傾向が続いているが、11月は前月比で持ちこたえた。前年同月比では0.7ポイントの上昇となった。
他方、ユーロ圏17ヵ国の11月の失業率は前月比0.1ポイント上昇の11.8%となり、11月もユーロ導入後の最高値を更新した。前年同月比では1.2ポイントの上昇となった。
国別に前月比でみると、11月の数値を入手できたEU加盟22ヵ国のうち、ルーマニア(6.9%→6.7%)は0.2ポイント改善し、アイルランド(14.7%→14.6%)、スロベニア(9.7%→9.6%)はともに0.1ポイント改善した。
他方、スペイン(26.2%→26.6%)とスウェーデン(7.7%→8.1%)は前月比0.4ポイント上昇と大幅に悪化したほか、スロバキア(14.2%→14.5%)は0.3ポイント、キプロス(13.8%→14.0%)とデンマーク(7.7%→7.9%)はともに0.2ポイント悪化した。失業率の悪化が続くスペインは27%台に近づいており、若年層(25歳未満)の失業率は56.5%に達し、とても深刻な状況となっている。
欧州委員会は2012年12月5日、若年者向けの雇用対策パッケージを発表(2012年12月21日記事参照)。フィンランドなどで導入され、成果を挙げた「若年者保障」の早急な導入を提案するなどの対応を急いでおり、ヨーロピアン・セメスターの中で実施状況を監視していく体制を構築しようとしている。
<スペインはルーマニアからの労働者移動制限を延長>
一方、2012年11月の失業率を前年同月比でみると、1.4ポイント低下したリトアニアが際立っており、これに0.9ポイントのルーマニア、0.4ポイントのアイルランド、0.2ポイントのドイツが続く構図は前月からそれほど変わっていない。2013年1月からEU議長国に就任したアイルランドの失業率が10月以降、緩やかに低下し始めているのは明るい材料だ。
他方、キプロスは4.5ポイント、スペインは3.6ポイント、ポルトガルは2.2ポイント、いずれも上昇した。ギリシャは2012年9月の数値までしか発表されていないため正確な比較ができないが、2011年9月から2012年9月までの1年間で失業率が7.1ポイント悪化しており、悪化率ではワースト1位。9月の失業率ではついにスペインを抜き、EUでの最高値となった。
EU全体としては緩やかな上昇傾向にあるが、オーストリア(4.5%)、ルクセンブルク(5.1%)、ドイツ(5.4%)、オランダ(5.6%)が引き続き4〜5%台の失業率を維持する一方、スペイン(26.6%)、ギリシャ(26.0%、ただし9月の失業率)は20%台後半に突入しており、格差は広がるばかりだ。
特にスペインについて、欧州委員会は2012年12月21日、同国がルーマニアからの労働者に対して行っている一時的な制限措置を、2013年12月末まで延長することを許可したと発表した。スペインは2007年1月にEU加盟したルーマニアとブルガリアに対し、2009年に労働者市場を一度開放した。しかし、欧州委はスペインでの失業者の増加を配慮し、2011年8月にスペインがルーマニアからの労働者を一時的に制限することを2012年末まで認めており、今回の発表はこの延長を認めるというもの。EU新規加盟国に対する労働市場へのアクセス制限は最長7年までと決められており、スペインは2013年末までしか同措置を継続することはできないが、なりふり構っていられない状況となっている。
(田中晋)
(EU・ユーロ圏)
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