構造改革の効果と外需回復がカギ−2013年の経済見通し−
ブリュッセル事務所
2013年01月08日
2012年に後退したEU経済は2013年に入ってようやく緩やかな回復に向かうと予測される。欧州委員会は2012年11月7日に発表した秋季経済予測で、2013年の実質GDP成長率を春季経済予測から0.9ポイント下方修正し、0.4%とした。他方、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)の12年11月28日の発表では、投資と個人消費の伸びを欧州委よりわずかに高く見込み、成長率を0.5%と予測している。
<成長は輸出頼み>
欧州委員会が2012年11月7日に発表した秋季経済予測(2012年11月8日記事参照)では、13年の実質GDP成長率を、春季経済予測(2012年5月14日記事参照)から0.9ポイント引き下げて0.4%、ユーロ圏も同様に0.9ポイント引き下げて0.1%とした。
欧州債務危機に伴う緊縮財政策や構造改革が、経済と雇用に重くのしかかっている。また、2012年の上半期には、世界経済の減速や、近い将来の消費と企業活動に悲観的な見通しがみられたことから、内需は後退したままだった。下半期もさらに脆弱(ぜいじゃく)なまま推移、2013年の上半期にようやく緩やかな回復が期待されている。
ここ数ヵ月の間に発表された広範な政策の完全実施と、経済不均衡の是正の進展が、債務危機で傷ついた加盟国の緊縮財政へのプレッシャーを緩和し、EU全体の信頼回復に徐々につながれば、必要な投資と個人消費がようやく回復する。欧州委は現在の世界的な需要の脆弱さは一時的なもので、純輸出が投資の回復を刺激し、その後の消費につながることを期待している。
内需は既に1年以上、経済成長にマイナスの影響を与えており、2012年下半期も同様の傾向が続き、13年上半期まで続くとみられる。世界の需要が徐々に回復する中で、純輸出が唯一の成長エンジンとなり、この傾向はもう数四半期続くとみられる。
他方、ビジネスヨーロッパは2012年11月28日に、欧州産業界による2013年の経済見通しを発表した。それによると、欧州委の秋季経済予測よりも、投資と個人消費についてやや楽観的な数値を示し、2013年の実質GDP成長率を0.1ポイント高い0.5%とした。ただし、これは加盟国首脳が各国レベルで構造改革の実施に努力し、EUレベルではユーロの経済ガバナンスの強化に努力することを前提としている。なお、ユーロ圏については0.1%で、欧州委の秋季経済予測と同じ予測値を示した。
<財政と政治の不確実性が景況感に影響>
ビジネスヨーロッパの分析は、財政と政治の不確実性がビジネスの信頼や経済成長、雇用に与える影響について警鐘を鳴らしている。欧州の景況感指数(ESI)は、2009年以降、最も低いレベルまで落ち込んでいるという。この傾向はユーロ圏でより顕著に現れており、他の欧州諸国にも徐々に広がっている。これは、財政と政治の不確実性、輸出需要の低下によるものと分析しており、その結果、EUの工業生産も低下している。
また、EU産業界のファンダメンタルズ(マクロ的経済指標)は強いままなのに対し、不確実性と(景気先行きに対する)信頼の欠如が投資を思いとどまらせていると指摘する。投資は特に中小企業での信頼欠如により抑制されたままだという。資金アクセスで厳しい条件に直面しているユーロ圏周辺国の中小企業は、特に資金難に直面しているという。ビジネスヨーロッパのメンバー企業によると、新規投資のGDPへの寄与度は2012年で前年比マイナス1.9%だったが、2013年も0.6%に回復するにすぎないとしている。
この結果、純輸出が唯一、GDP成長を促進する要素になっているという指摘は欧州委の分析と同様だ。また、いくつかのユーロ導入国は、労働コストの低下に助けられ、貿易赤字を縮小させているという。
低い成長見通しを反映して、今後数年の雇用は悲観的なものとなっている。ビジネスヨーロッパのメンバー企業は、2013年の失業率がEUで11.0%、ユーロ圏で11.5%に達すると予測している。これは過去20年の間で、最も高い水準で、2013年の失業者が2,600万人以上になることを意味している。2012年末までに70万人が職を失ったが、2013年にはさらに40万人が職を失うと予測している。
このことからも、EUは現在、「成長と雇用」を重視し、雇用対策、特に若年層の雇用強化を急いでいる(2012年11月20日記事参照)。
<ユーロ圏の統合深化と加盟国の競争力向上が課題>
ビジネスヨーロッパはまた、財政と政治の不確実性を踏まえて、景気回復のために以下の5点を必要な措置として提言している。
(1)信頼を構築するため、EU首脳は、より大きな政治・経済統合を含むユーロの強化のための具体的なステップを約束する必要がある。
(2)財政規律と構造改革により、肯定的な影響が表れ始めている。加盟国は競争力を引き上げるために、野心的な改革プログラムを約束し、労働コストを生産性レベルに一層見合ったものに反映させることが必要だ。
(3)加盟国はまた、信頼と長期的な成長を強化するために、財政再建計画を進める必要がある。再建計画は成長につながる投資や消費者の信頼回復を優先しながら、官民連携によることも含めて、公共部門の効率性を強化することに焦点を絞るべきだ。
(4)銀行の資本増強や財政規則の修正により長期的な財政安定を向上させる措置は、投資と成長を保持するために、企業の資金アクセスを強化する方法で導入されなければならない。
(5)加盟国の改革進捗を条件とした国債購入の重要性に留意した欧州中央銀行(ECB)の最近の国債購入プログラム〔アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)〕を歓迎する。このスキームは財政安定を支援し、ユーロ圏の金融市場の分裂を防ぐために重要な役割を担うことができる。
(田中晋)
(EU)
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