EUの2013年GDP成長率、1.3%に下方修正−欧州委春季経済予測−

(ユーロ圏、EU)

ブリュッセル発

2012年05月14日

欧州委員会は5月11日、EUの2012年の実質GDP成長率を0.0%、13年を1.3%とする春季経済予測を発表した。13年については、11年第4四半期からの景気後退や、12年中も続く構造調整を伴う財政再建の影響もあり、前回の秋季経済予測から0.2ポイント下方修正した。

<景気回復は12年下半期以降に>
欧州委が5月11日に発表した春季経済予測(注)によると、12年のGDP成長率は、12年2月時点の中間経済予測(2012年2月24日記事参照)の0.0%と同様だった。ユーロ圏についても、2月の中間経済予測と同じマイナス0.3%とした(表1、表2参照)。

EU経済の見通し(前年比伸び率)

12年は11年第4四半期のマイナス成長を受け、EU、ユーロ圏とも年初はGDPの収縮が予想されており、技術的な景気後退(リセッション)に突入したと欧州委は分析する。EUでは多くの国が上半期の間、四半期ベースでみると、前期比ゼロ成長か、わずかにマイナス成長となり、弱含みで推移する。いくつかの先行指標は緩やかな短期のリセッションを示唆しており、最新データではまだ回復の兆しがみられない。

また、負債圧縮(デレバレッジング)のプロセスが経済全体で継続されるため、12年には国内需要がGDP成長に寄与することはないと分析する。銀行はバランスシートを一層強化する必要があり、タイトな信用条件が消費と投資を圧迫すると予想する。民間投資は現在、まだ契約段階にあり、12年中は成長の足かせになるとみている。

輸出主導による回復や低い資金調達コスト、事業見通しの不確実性の消滅を受けて、13年に経済は徐々に回復し、成長が促進されると予測する。個人消費は高い失業率や実質所得の脆弱(ぜいじゃく)な伸び、予防策としての貯蓄率の上昇、多くの加盟国での家計債務の増加により、制約が続くとみている。期待される信頼の回復と、労働市場状況の安定、インフレ圧力の緩和が助長する実質可処分所得の伸びにより、民間消費は12年下半期から徐々に再加速し、13年に拡大するとみる。

各国の実質GDP成長率見通し

<求められる適切な財政措置>
対照的に、公的債務の持続可能性の保証と信頼回復に必要な財政再建を続ける中で、政府消費支出は12年、13年ともに減少すると予測する。必要な財政再建は短期的には経済活動を抑制する。しかし、財政措置の適切な選択とそれらの信頼性が、経済成長に不利な影響を与え得る短期的なインパクトを制限できるという。全体的には、ビジネスや消費者の信頼回復や実質可処分所得の上昇を背景に、経済回復の主要な原動力が13年には輸出から国内需要に引き継がれることを期待している。

多くの加盟国で継続的な財政再建策が求められ、さまざまな制約条件がある中で、13年に向けて緩やかな回復を期待している。2月の中間経済予測では発表しなかった13年のGDP成長率は、11年の秋季経済予測と比べ、EUとユーロ圏でそれぞれ0.2ポイント、0.3ポイント下方修正し、1.3%、1.0%とした。

なお、加盟国レベルでみると、金融危機後に発覚した対内外の不均衡により、構造改革の必要性が迫られている。

欧州委のオッリ・レーン副委員長(経済・通貨問題担当)は「回復の兆候はあるが、経済状況には加盟国でまだ大きな格差があり、脆弱なままだ。われわれは危機の前後に積み上がった調整中の財政不均衡と構造不均衡が、脆弱な景況感で悪化したことを目の当たりにした。さらなる行動を決定しなければ、EUは低成長のままだろう。強固な公共財政は持続成長と経済ガバナンスの新たな強い枠組みの条件で、われわれは安定と成長を強化する政策を加速することで(財政・構造)調整を支援しなければならない」と述べた。

<全体的な雇用悪化が覆い隠す加盟国間の格差拡大>
雇用をみると、EUの失業率は12年に入って早期に10%を超えた。雇用が増加し、失業率が徐々に低下する加盟国と、労働市場のパフォーマンスが急速に悪化する加盟国との差異が拡大しているが、全体的な悪化がそうした差異を覆い隠している。先行指標をみると、失業率を増加させる短期的なリセッションにより、EU労働市場が脆弱に推移する見通しを示唆している。欧州委は、13年には、緩やかな景気回復と労働市場改革のポジティブな効果がEUの雇用微増につながることを期待している(表3参照)。

各国の失業率予測

消費者物価上昇率は、11年には主に国際的な市況商品価格の上昇と、いくつかの加盟国での間接税や管理費の上昇により、一時的に3%を超えた。その後、比較的脆弱な経済活動が消費者物価を引き下げ、間接税や管理費の引き上げなどの財政措置が物価の急激な低下を抑制している。12年終わりから13年にかけての抑制された経済成長は、物価を押し上げるには至らないとみている。その結果、13年の消費者物価上昇率は2%以内と予測している(表4参照)。

各国の消費者物価上昇率予測

11年の財政赤字はEUではGDP比4.5%、ユーロ圏では4.1%で、EUでは秋季経済予測と比較すると、わずかながら改善がみられる。さらなる財政再建措置と期待される緩やかな経済回復との組み合わせにより、財政赤字は12年、13年も低下が期待されており、EUとユーロ圏の財政赤字を、それぞれ12年にはGDP比3.6%、3.2%、13年には3.3%、2.9%と予想している。

EUの公的債務残高は依然上昇傾向にあり、12年にはGDP比86.2%、13年には87.2%と、11年の秋季経済予測との比較でも上方修正された。ユーロ圏でも、12年でGDP比91.8%、13年で92.6%に達すると予想され、ソブリン債問題解決にはまだまだ時間がかかりそうだ。

(注)欧州委は、年2回(春季経済予測と秋季経済予測)、詳細な予測値を発表するほか、この両経済予測の合間の時期に定期的に年2回、GDP成長率と消費者物価上昇率について中間経済予測を発表している。

(田中晋)

(EU・ユーロ圏)

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