マイナスながら改善の見込み、国政選挙次第で影響も−2013年の経済見通し−

(イタリア)

ミラノ事務所

2013年01月09日

政府は2013年の実質GDP成長率をマイナス0.2%と予測する。他の国内調査機関なども同様にマイナスの見通しを発表しており、2012年から2年連続のマイナス成長は避けられない見通しだ。特に企業活動や消費の低迷によって内需が依然として力強さを欠き、2013年早々に予定されている国政選挙の結果が経済に大きく影響する可能性もある。

<2013年は2年連続のマイナス成長へ>
政府が2012年9月に発表した見通しでは、2013年の実質GDP成長率予測を4月発表の0.5%から0.7ポイント下方修正し、マイナス0.2%と予測している。2012年通年がマイナス2.4%と大きく落ち込んだとみられるのに比べると、2013年はやや改善するものとみられる。しかし、2012年の落ち込みが当初の想定以上に大きく、また経済の足元は依然として脆弱(ぜいじゃく)であるため、2年連続でのマイナス成長を記録することになる見込みだ。

イタリア経済は2011年第3四半期以降、2012年第3四半期まで5期連続でのマイナス成長が続いており(2012年第3四半期は速報値でマイナス0.2%)、早期の経済回復が望まれている。一方で、政府は欧州債務危機の影響を受け、短期的には財政再建にかじを切らざるを得ない。これまでのイタリア国債の利回り上昇(価格は下落)の影響で銀行の資金調達コストも上昇し、企業の資金調達などにも影響が出ている。さらに、世界経済の後退と、企業や消費者の経済に対する信頼感の低下によって、実体経済は回復の糸口をつかめない状態にある。

<輸出が堅調も内需が不振の見込み>
政府見通しによる2013年のGDPを需要項目別にみると、外需では輸出が前年比2.4%増と堅調に推移。純輸出でみた場合も、政府はわずかながらも経済成長にプラスに寄与すると予測する。一方、内需では個人消費が0.5%減と冷え込み、また政府消費支出は財政再建の中で1.4%減と伸びは期待できず、最終消費支出全体では0.7%減となる見通し。総固定資本形成については、政府は0.1%増とわずかながらもプラス成長を予測している。特に機械設備投資が2013年後半にかけて回復し0.9%増とみるが、経済全体をプラス成長に押し上げるほどの勢いはない。

工作機械工業会(UCIMU)によると、2012年第3四半期の工作機械受注は全体で前年同期比16.8%減。特に国内受注については42.6%減と大幅に減少している。受注指数(2005年=100ポイント)も17.4ポイントと大きく落ち込んでおり、大幅な回復が期待できる状況にはなく、足元の設備投資は脆弱となっている。

また、国家統計局(ISTAT)は、2013年の実質GDP成長率を政府予測と比較して0.3ポイント低いマイナス0.5%と予測している。ISTATは、5月に発表した予測の中では2013年の成長率を0.5%としていたが、1.0ポイントの下方修正を行いマイナス0.5%とした。2013年には一部企業による設備投資の落ち込みに歯止めがかかるとみているが、需要回復に勢いがないため、生産能力の稼働率が低い。利益率も低迷するため、企業の設備投資意欲も低く、総固定資本形成の回復は限定的とみている。

<民間は個人消費の回復を悲観視>
最大の産業団体であるイタリア産業連盟の研究所は、2013年の実質GDP成長率予測をマイナス0.6%と発表した。世界経済の牽引役となっていた新興国経済の減速、米国経済の不安定化、最大の貿易相手国であるドイツを含めたユーロ圏諸国の経済低迷などにより、回復が2014年春までずれ込むとみている。

特に個人消費については、政府やISTATの予測よりも厳しく、前年比1.0%減と最も厳しく予測している。同研究所は、今後、国際金融市場の安定化に伴い、不確実性の低下、財政再建による各種国民負担の緩和、厳しい信用条件の改善などによって、個人消費の落ち込みが改善されると指摘している。しかし、足元では消費者信頼感指数(2005年=100ポイント)は、2012年11月に84.8ポイントを記録し、2000年以降における最低の水準を更新した。また、家計の可処分所得の減少(2012年第2四半期は前期比1.0%減、前年同期比1.5%減)に加え、失業率も上昇傾向(2012年12月3日記事参照)にあるなど、個人消費の大幅な回復は期待できない状況となっている。

<国政選挙によるネガティブな影響に懸念も>
ISTATは2013年の経済見通しについて、各種の不確定要素が残っていることを指摘している。不確定要素は国外と国内要素に分けられ、国外要素としては、米国の「財政の崖」以降の実質的な増税の影響や先進国の需要低迷による新興国経済の後退が外需に影響することを懸念している。また国内要素については、特に2013年早々に予定されている国政選挙を挙げ、その結果次第では国家財政、民間投資、消費者信頼感に対してネガティブな影響を与えかねないと指摘している。

また、イタリア産業連盟の研究所も、2013年のイタリア経済について、不確実性が高いと指摘。その1つの要因として国政選挙を挙げ、現状では過半数を取るような、安定し、かつ改革志向の政権が迅速に発足する保証はないと懸念を示している。同研究所は、選挙結果次第では、2013年の経済成長回復のタイミングや評価にも影響を与えかねないとしており、モンティ政権後の政局がイタリア経済はもとより、一連の欧州債務危機にとって大きな波乱要因となる可能性もある。

主要経済指標

(三宅悠有)

(イタリア)

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