伸び率鈍化も、2.2%成長を予測−2013年の経済見通し−

(ポーランド)

ワルシャワ事務所

2013年01月09日

財務省は2013年のGDP成長率を2.2%と見込む。2012年6月時点の予測から下方修正したものの、成長率はユーロ圏を大きく上回る。トゥスク首相は財政の安定を重要課題としつつも、道路建設など重点分野への財政支出は継続する意向だ。また、2013年からは年金制度改革法に基づく法定退職年齢の段階的引き上げが実施される。

<中銀の成長率見通しは1.5%>
財務省は2013年の実質GDP成長率を2.2%と予測、2012年6月時点での予測(2.9%)を下方修正した。長引くユーロ圏の経済低迷の影響から、2012年の成長率見通し(2.5%)を下回る見込みだ。ロストフスキ財務相は、欧州経済が回復に向かうのは2013年後半との見通しを示している。

需要項目別にみると、GDPの約6割を占める個人消費が2.2%増と2012年見通し(2.0%増)をわずかに上回る。労働市場の改善が見込まれず失業率が高止まりすることから、賃上げ圧力も弱く、消費の伸びは限定的だ。現地通貨ズロチ安を背景に輸出が4.0%増と伸びる一方で、景気の先行き不透明感が強いことから総固定資本形成の伸びは0.7%増にとどまる。

一方、国立銀行(NBP、中央銀行)は2013年の経済成長率を1.5%と財務省よりも厳しい見通しを発表し、2012年6月時点(2.1%)から下方修正した(2012年11月)。NBPは主な輸出先であるEU経済の低迷に加えて内需も停滞するとしており、総固定資本形成は前年比3.4%減少すると予測している。消費者物価指数上昇率はNBPのインフレ目標と同じ2.5%と見込んでいるが、中期的にはインフレ目標を下回る可能性があるとして、2012年11月に政策金利を0.25ポイント引き下げて4.50%とした。

欧州委員会が2012年11月に発表した秋季経済予測も、2013年のGDP成長率を1.8%とし、鈍化を予測する。EU補助金を活用した主なインフラ投資案件が2012年前半に完了した反動も経済減速の一因と指摘している。2012年春季経済予測(2.6%)を下方修正したものの、ユーロ圏(0.1%)、EU(0.4%)と比べると堅調さも目立っている。

<財政再建への取り組みを継続>
トゥスク首相は国家財政の安定を重要課題と位置付けている。ただし、経済成長が鈍化する局面でも重点分野への支出は維持する方針で、道路建設など必要な公共投資は継続する意向だ。首相は予算策定に当たって「慎重な決断が求められた」と述べた。

さらに2013年は建設分野での許認可手続きの簡素化・短縮化など、行政手続きの効率化に引き続き取り組むほか、3人以上の子育て世帯向けの優遇税制拡大なども推進するとしている。財政改革の柱として打ち出していた年金制度改革は、2012年6月に関連法が成立した(2012年12月5日記事参照)。年金受給資格を得る法定退職年齢が2013年1月から段階的に引き上げられ、男女とも67歳になる。ロストフスキ財務相は年金制度の改正によって2013年に2億ズロチ(1ズロチ=約26円)、2014年に19億ズロチ、2015年には38億ズロチの支出を抑制できるとしている。また、2012年の財政赤字がGDP比3.5%に悪化する可能性に言及しつつも、2013年は改善に向かうとの見通しを示している。

主要経済指標

(志牟田剛)

(ポーランド)

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