解雇通告が急増、好調だった経済に陰り

(スウェーデン)

ストックホルム事務所

2012年12月20日

景気低迷がユーロ圏を中心に広がる中、安定した経済成長を続けていたスウェーデンだが、ここにきて景気に陰りがみえ始めた。2012年夏以降、大量の解雇通告を行う企業が増え、国民や企業の将来への期待感も減退している。

<一部の労組は給与削減を受け入れる方向に>
大手製造業を中心に2012年夏以降、大量の解雇通告が続いている。通信機器大手エリクソンは全国で1,550人(うちストックホルムで1,000人)の人員削減計画を11月7日に発表した。製紙・パルプ大手ストゥーラエンソは10月22日、新聞紙製造事業再編の一環としてヒルテ工場の製紙機械1台の稼働を停止し、140人を解雇すると発表した。同業大手ホルメンも10月2日、ハルスタビーク工場の3台の製紙機械のうち最も古くエネルギー効率の悪い1台の稼働を停止するとして、230人に解雇通告を行った。また、特殊鋼製造SSABは2012年第3四半期だけで7億8,900万クローナ(1クローナ=約12.8円)の売上高減少を記録し、10月11日、450人を対象に解雇を通告したほか、解雇対象でない人員についても労働時間を20%短縮するとともに、給与を10%削減すると発表した。

11月には、スカンジナビア航空〔SAS、スカンジナビア3ヵ国政府が株式の50%を保有(スウェーデン21.4%、ノルウェー14.3%、デンマーク14.3%)〕の経営再建策に効果がみられないとして、銀行が融資に難色を示したことから、同社は倒産危機に陥った。しかし、20%近くの給与削減などのコスト節減策を行うことで銀行側と折り合いがつき、倒産を回避した。

これまでみられなかった最近の傾向は、こうした給与削減を労働組合が認める方向にあることだ。しかし、一般的には依然として多くの労働組合が「レイオフはまだ意味があるとしても、給与削減で経営状態が良くなることはない」と給与削減策には否定的だ(「スベンスカダーグブラデット」紙11月30日)。

自動車産業では、クリスマスから新年にかけて従業員の休暇期間を延長するほか、レイオフをすることもまれではない。トラック・バス製造のスカニアでは、クリスマスから新年にかけてと2013年1月に数日の国内工場の操業停止を計画している。

<国立経済研究所の景気指数は2ヵ月連続低下>
国立経済研究所(NIER)は11月27日、2ヵ月連続で景況感指数が低下したと発表した。景況感指数は10月の92.7から11月には86.0と大幅に低下した。産業別では小売業が2ポイント上昇し3.0になったほかは軒並み下降し、最も不況感の強い建設分野は2ポイント減のマイナス42だった。家計は10月のマイナス2.9から11月はマイナス7.3と悪化した。国民は支出を控えて貯蓄に励んでおり、高価な投資財の購入を見送り、レストランやカフェなど比較的身近で安価な消費を増やしている。

しかし、市中銀行の経済アナリストは、今回の景気落ち込みは2013年半ばには回復するだろうと予測している(「スベンスカダーグブラデット」紙11月30日)。

<政府は特別な対策を講じず>
ボリィ財務相は11月19日にストックホルムで行った講演で、景気は確かに減速する気配をみせているが、9月20日に発表した2013年度政府予算案の方針を修正するような段階には至っておらず、現在のところ、特別な経済的・社会的対策を講じることは考えていない、と述べた。

また、ノルマン金融相は11月15日、対外債務に関するスウェーデンの政策に変化はなく、着実に削減する方針を続行すると発表した。発表によると、スウェーデンの対外債務は2012年初めに1兆1,580億クローナだったが、2016年末には9,280億クローナに減る見込みだ。GDP比では現在の33%から2016年は21%になる。

景気が減速しているといっても、スウェーデンはEU域内ではまだ成長率の高いグループに属している。2012年第3四半期の前年同期比の実質GDP成長率は1.3%で、ラトビア(4.8%)、リトアニア(3.2%)、エストニア(2.9%)、スロバキア(2.6%)、ポーランド(2.5%)に次いで第6位だった。

スウェーデンの景気減速は、主として輸出相手国の経済悪化によるものなので、従来そのような輸出の伸びの鈍化の時期に景気下支えの役割を果たしてきた国内需要活性化策を待望する声が上がっている。

(三瓶恵子)

(スウェーデン)

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