外資比率算定基準に関するSEC規則を強化

(フィリピン)

マニラ事務所

2012年12月04日

外資規制の対象となる事業を行う企業の外資比率算定基準の取り扱いについて、国内最大手の電話会社フィリピン長距離電話(PLDT)に関する訴訟で最高裁判決が確定したことを受け、フィリピン証券取引委員会(SEC)は同判決の趣旨に沿ったSEC規則案を11月5日に公表した。全企業を対象にした外資規制強化の方針で、新聞公告を経て施行される予定だ。

<2回目の違反までは罰金、3回目で法人登記を抹消>
新規則の概要は以下のとおり。

(1)適用対象法人
新規則の適用対象法人は、外資規制を受ける事業分野に従事する全ての法人とする。

(2)外資比率の順守
適用対象法人は常に、法律の定めによる外資規制比率を順守しなければならない。その法人が権利の異なる複数の株式を発行している場合は、それぞれ種類の異なる株式ごとに当該規制比率に適合しなければならない。

(3)報告義務
株主権の移転については、その取引日から5日以内にコーポレートセクレタリーを通じて、その法人に移転の起因となる契約書その他の書面を提出しなければならない。提出のない場合は、契約書などは無効とされ、当事者間で履行することはできない。契約書などの提出後、5日以内にSECに報告しなければならない。SECへの報告がない場合は、その取引の権利者は外国人と見なされる。

(4)フィリピン国籍証明書の提出
出生証明書、パスポートなどの提出が義務付けられる。

(5)外資比率規制違反に対する罰則規定
○1回目の違反:法人に対して払い込み済み資本金額の0.2%〔ただし、限度額は250万ペソ(1ペソ=約2.0円)〕の罰金。および、社長、最高経営責任者(CEO)など責任者に対して1人10万ペソの罰金
○2回目の違反:法人に対して払い込み済み資本金額の0.5%(ただし、限度額は250万ペソ)の罰金。および、社長、CEOなど責任者に対して1人20万ペソの罰金
○3回目の違反:法人登記抹消

<現存の法人への適用は5年間猶予>
(6)経過措置
本規則は全ての法人に対して即時適用される。しかし、現存する法人については、その適用を5年間猶予する。

<最高裁判決を受けて新規則を公表>
PLDTが発行株式の6.4%に当たる11万株を香港の投資会社に売却しようとしたところ、議決権を有する普通株総数の外資比率が50%を超えることから、株式売却の差し止めを求める訴えが提起されていた。最高裁判決では、外資比率算出上の「資本」について「議決権を有する普通株のみをいい、議決権を有しない優先株を含めない」との判断を示した。今回、この最高裁判決に対する異議申し立てが退けられ、判決が確定したことを受け、SECが新規則案を公表した(2012年1月17日記事参照)

<1株額面金額の異なる株式発行についても対応を>
外資規制のかかっている事業に従事する法人を設立する上で、1株額面金額の異なる株式を発行し、株式(議決権)比率では外資規制をクリアしているものの、出資金額比率では外資規制を超えるという事例が日系企業の中にも多くみられる。この点については、新規則の概要の「外資比率順守」(それぞれ種類の異なる株式ごとに当該規制比率に適合しなければならない)の趣旨からは、猶予期間内に手当てが必要になるものと思われる。

(辻一郎)

(フィリピン)

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